ニュース

卒業記念レース ハンマー投げからハンドル投げへ 元日本王者・野口が挑む


 日本競輪学校の男子111回生(61人)と女子112回生(第6期生、17人)の卒業記念レースが22、23の2日間、静岡競輪場で行われる。男子はハンマー投げの元日本チャンピオン・野口裕史(33=千葉)が注目の的。豪快な投てきで活躍した鉄腕がハンマーをハンドルに持ち替えて新たなステージへと挑む。

 競輪学校の地味なジャージー越しからも厚い胸板の筋肉が浮かび上がる。身長1メートル76、体重99キロの屈強な肉体。ハンマー投げから転向した野口は「これでも入学して上半身が細くなった。昔の陸上仲間には“弱そうな体になったな”と言われた」と笑った。
 競走訓練では56走して12勝。在校25位だが「今は楽しみよりも不安が大きい。自転車に乗り始めて1年ちょっとですから」と控えめに話した。
 函館工からハンマー投げを始め、自慢の筋力とテクニックで放物線を描き続けた。順大卒業後は実業団に入り、04年アテネ五輪金メダリスト・室伏広治氏(42)が欠場した15年日本選手権を優勝。20連覇中だった絶対王者が不在の中で21年ぶりに誕生した新王者として話題を集めた。
 だが、夢の五輪は遠かった。新たな道を模索した時、順大陸上部の先輩になる海老根恵太(39=千葉・86期)が09年グランプリを制した記憶がよみがえった。ライブ観戦していた野口は「格好良かった。僕も体を使った仕事がしたい」。16年続けたハンマーを置き、競輪挑戦を決意した。
 野口の“転職”をサポートしたのは陸上時代に共通のトレーナーを通じて知り合った大相撲の関脇・琴奨菊(33)。同い年とあって意気投合。心肺機能を高めるため千葉競輪場で一緒に自転車トレーニングをこなすなど切磋琢磨(せっさたくま)した。琴奨菊が16年初場所で初優勝を飾ったときには抱き合い、うれし涙を流した。野口は「琴奨菊関とずっと励まし合ってきた。連絡してまた一緒に練習します」と卒業後のプランを明かした。
 家に帰れば妻の明子さん(34)、長女の結萌(ゆめ)ちゃん(4)が待っている。33歳での競輪挑戦。「娘が成人するまで苦労はさせられない。快く送り出してくれた妻にもいい思いをさせたい。家のローンもある。同期の誰よりも多額の借金を背負ってます(笑い)」。家族に支えられ、友人に刺激を受けながらペダルを踏む。「他の人よりも自転車に乗っている時間が短い分、乗り込んでいくしかない。卒記は決勝まで行きたい」。より遠くから、より速くへ――。111期No・1の称号にチャレンジする。

 ♠野口 裕史(のぐち・ひろし)1983年(昭58)5月3日、北海道北斗市出身の33歳。順大卒。15年日本選手権の男子ハンマー投げで優勝、21年ぶりの新王者に。師匠は武井大介(86期)。選手になってからの目標は「先行して勝てる選手」。1メートル76、99キロ。血液型A。