日本一まで踏み込む

尾方 真生

 
 九州地区からガールズケイリン界にまたまた新星が現れた。熊本県出身で福岡支部としてデビューする尾方真生(22)。小学校時代はエアロビックで全国優勝を果たすなど、運動神経は抜群。29日の小倉競輪場でのデビュー戦に向けて練習に励む尾方に、新たなホームとなった久留米競輪場で話を聞いた。
 
 ペダルひと踏みに思いを込め、ガールズケイリンの舞台で日本一を目指す。尾方は小学生の時にエアロビックで2度の全国制覇を経験。中学、高校では陸上部に所属し、親元を離れた九州学院高校(熊本)3年時に県高校総体の陸上女子100㍍で2位に輝いた。
 
 高校2年からの下宿先が元競輪選手の長船浩泰さんだった縁もあり、未知だった競輪、そしてガールズケイリンの存在を知ることになった。熊本競輪場で練習する選手たちの姿を見て、そのスピードのとりこになった。
 
 熊本尚絅大に入学後、ガールズケイリンの試験に一発合格。大学を休学して118期生として養成所に入所したが、自転車経験の浅さが響いて「最初はなかなかうまく走れなかった」。それでも徐々に頭角を現し、記録会では200㍍のタイムトライアルで養成所新記録を打ち立てた。さらに卒業記念レースで優勝。姉弟子の小林優香や児玉碧衣らも成し遂げられなかった卒記チャンプに九州勢で初めて輝いた。
 
 根底にあるのは負けず嫌いの性格。母・あき子さんも「小さい頃から負けん気が強くて、保育園の徒競走で負けても泣いちゃうような子だった」と振り返る。
 
 プロデビューは熊本支部からではなく、久留米グループを選んだ。現在は東京五輪を目指して拠点を静岡に移している小林優香や、ガールズグランプリ連覇中の児玉碧衣以外にも、多くの強豪選手を輩出した抜群の環境だ。憧れの選手であり、現在、ガールズ最強の児玉とも練習ができて「来て良かった」と実感する日々。久留米グループを束ねる師匠の藤田剣次も「課題はあるけど強い。課題が克服できれば、グランプリ(に出場できる)レーサークラスでしょう」と太鼓判を押す。
 
 自転車レースの魅力とは、の問いには「怖いイメージもあるけど、実際に乗ってみるとスピード感が楽しい。普通の自転車と違って〝踏んだら前に進む〟感覚が面白いです」と語る。
 
 デビュー戦は29日。初めてガールズケイリンを観戦した北九州市の小倉競輪場でプロレーサーとしての第一歩を踏み出す。「少しずつ緊張してきました。自分の場合はレースになってしまえば大丈夫だけど、そこまでの間に緊張するタイプですね」。本番に強い証拠だろう。「自分からレースを動かす積極的な走りをしたい」。エアロビ、陸上短距離で培った敏しょう性、ダッシュ力を生かした攻めでガールズケイリンに新風を吹き込み、日本一の夢に向かってペダルを踏み続ける。
 
尾方 真生(おがた・まお)1999年(平11)5月7日生まれ、熊本県多良木町出身の22歳。愛称はマオ、マオちゃん。好きな食べ物はアイス、焼き肉。最近の趣味は韓国ドラマを見ること。1㍍61、血液型O。
 
ガールズケイリン 2012年7月、48年ぶりに復活した女子競輪の名称。12年デビューの102期から偶数期がガールズ選手で、今年5月に118期がデビュー。現在は総勢153人。1レース7人で行う。男子の競輪とは違いライン形成はなく、完全な個人戦。判定基準も自転車競技の国際ルールにのっとり、競輪とは異なる。年末には年間の賞金ランキング上位7人でガールズグランプリが開催され、15年は小林優香、18、19年は児玉碧衣と、尾方の姉弟子にあたる久留米勢が優勝している。
 
 

エアロビで小学校時代に全国制覇

 母・あき子さんの勧めでエアロビックを習い、小学2、4年時に「JOCジュニアオリンピックカップ 全国エアロビック選手権大会」のユースⅢトリオ部門で全国優勝。「1人、凄く上手な子がいたおかげで…」と母は謙遜するが、3人ともハイレベルで息が合わないと成し遂げられないはずだ。
 
 得たものは日本一の称号だけではない。「今になって思い返すと、エアロビをやったおかげで忍耐力が凄くついた気がします」。これまで、そして今後の人生にも必要な要素を小学生の段階で身につけていた。
 
 それから10年あまりが経過した今も「体は柔らかいです」と、開脚しながら顔を地面につけて証明してくれた。
 

ヤクルト村上とダブルで夢実現だ

 九州学院高校では、プロ野球セ・リーグ昨年の新人王、ヤクルト・村上宗隆内野手と同級生だった。「向こうはスポーツコースなのでクラスは別。体育祭では、一緒に写真を撮ってもらおうと、たくさんの人からお願いされていましたね」。村上は1年夏から甲子園に出場し、学内で人気だったという。「私は話をしたこともなくて、存在を知っていた程度」と面識はなかったが、村上と尾方による同級生ダブル日本一も夢ではない。