始まりの場所でV頂く

浅井 康太

 
 今年の浅井は2月の静岡記念、3月の松阪FⅠ(完全V)、4月の高知記念、5月の宇都宮記念とすでに4V。落車、失格、ケガという負のスパイラルにより優勝0回だった昨年の不振がウソのような活躍ぶりである。
 
 11年以降、8年連続で君臨してきたS級S班のイスを明け渡す感覚は、2度の頂点を味わった男にしか分からないだろう。実際「SSでいなくてはいけない」という使命感と、そのために欲した技術や知識が、逆に自分の感覚を見失う原因となってしまったのかも知れない。
 
 S級S班の使命感から解き放たれた2020年。久しぶりに素の自分と向き合えた。そして、競輪のことが大好きな自分とも再会できた。これまでの立場ではできなかったこと。例えば10年ぶりに誘導員としてバンクを走った。そして守りに入らず全て1着を狙っていくという意味を込めて、座右の銘を「虎視眈々(たんたん)」に変更した。練習の時間以外も競輪界発展のため、5G時代に沿ったやり方で新規ファンを取り込む努力をしている。
 
 ひと言でいうのなら、いまの浅井康太は〝自由〟である。そして〝自由な浅井康太は強い〟ということ。松浦悠士、清水裕友という新世代たちの活躍も、浅井にとっては〝楽しみが増えた〟に過ぎない。
 
 11年前、悔し涙を流しながら初めてGⅠの決勝に乗り、表彰台に立った高松宮記念杯は、浅井にとっての始まりの場所でもある。そろそろ獲らせていただきます!