S級初制覇へGO

野口 裕史

 
 1年2カ月ぶりのGⅠはほろ苦い結果に終わった。千葉の大砲・野口は10月寛仁親王牌(前橋)に出場。1度も確定板に載れず、大きな数字が並んだ。
 
 「状態自体は悪くなかったけど、焦って踏んで、後ろが付いて来られない展開が多かった。コーナーでもカカる感じがなくて、逆に力を出し切ってない感があった」
 
 初日はオープニングレースの1番車に選ばれた。残り2周で主導権を奪ったが後ろが連結を外し、単騎逃げ。はまった竹内雄作に番手まくりされて9着。敗者戦回りとなり、2日目も先行して最終4角は先頭で回ってきたが直線で失速して6着となった。
 
 「先行態勢に入るまでの動きが問題。このクラスだと、そこまでが難しい」
 
 3日目は先手こそ奪えなかったが早めの巻き返し。ただ中部の番手捲りに屈して8着だった。
 
 「相手が二段駆けで自分のレースをやれなかった」
 
 最終日こそ結果を残したい。強い気持ちで主導権を奪ったが、後ろが畑段嵐士にさばかれる厳しい流れ。番手捲りされて残念ながら8着。前橋のドームバンクはスピードタイプ向き。陸上競技ハンマー投げで15年日本選手権を制している野口のようなパワータイプには持ち味を発揮しづらかったのかもしれない。
 
 「(前橋の後は)日程が結構空くので趣味のトレーニングに集中できる。もっと状態を上げたい」
 
 気持ちを切り替え福井へ向けて練習に打ち込んだ。そんなときに京王閣から追加の連絡を受けた。「慌てて仕上げた感じ」と言いながらも初日は逃げ切り。準決は捲って2着に入った。
 
 「初日が終わってからセッティングを修正したら良くなった」
 
 決勝は先手を奪うと後ろを回った鈴木裕の優勝に貢献した。野口自身は6着と粘り切れなかったが、福井へ向けてリズムは上向きだ。
 
 「福井はA級で1回、S級では(3月)ウィナーズカップで1回走っている。今回が3回目です。(福井の同期)小森貴大君から11月でも雪が降る時があると聞いた。そうなれば重馬場になって自分向きになると思います」
 
 パワフルな先行は誰もが認めるところだがS級優勝は不思議と手が届かない。18年9月S級昇級から26回も決勝に進んでいるが2着4回が最高成績。寒さが増すほどVのチャンスは広がってくるはずだ。風を切り裂き、今度こそ悲願をかなえてもらおう。