――昨年はキャリアハイの成績。今年はグレードレース未制覇。自身の状態は?

 「去年の出来が良かっただけに、落ち幅が大きいなと思うんですけど、状態が上がる前の自分と比べたら、いい方なのかなと思います。今年は良かった開催が少ないですね。高知(4月GⅢよさこい賞争覇戦)の準決でも逃がされる形になってしまって(9着)、真杉(匠)君が強かったというか、状況がよく見えているな、と。勉強になりました」

 ――昨年の別府記念は地元の期待を背負って完全Vを果たした。

 「調子がいいという自覚、取れるという自信もあった。やっぱり、第一にうれしかったですね。ラインあっての優勝だと実感しました。まさか決勝で松谷秀幸(42=神奈川)さんが3番手を固めてくれるとは思わなかったので、それも大きかったです。あのレースで、ラインの重要性をより感じられた。なるべく決勝までに九州の人たちと上がっていく、そこを目標にしていかないと優勝できないので意識は変わりました」

 ――今年は連覇が懸かる。

 「運が良ければ、ですかね。前がいるかどうかもありますし、後ろに入ってもポカするパターンもある。今年の成績があまり良くないので、大きいことは言えないですが、何とかしてそこに持っていく努力はしているつもりです」

 ――ファンは再び強い阿部選手を見たい。

 「練習も去年と変わらずやれているから、力的には落ちていないはずなんですけど…。ただ、練習内容が去年のままになってしまっているというのはあります。変えていかないといけない時期なのかな。どうしても、調子がいい時のメニューをやってしまいがちなんですけど、それではそこまでしか行けない。その上を目指す選手になりたい。よく山田英明(42=佐賀)さんに相談させてもらうんですが、練習メニューも取り入れることにしました」

 ――どんなメニュー?

 「自宅内での自転車練習をやってみたら?と言われて、時間がないときに家で、短時間で維持できるからいいんじゃない?と。競輪場で、どんなメニューができるか試しているので、それを土台に組み立てていけたら。腐らずにやれ、とよく言われるので、そこが大事かなと思います。英さんからは〝去年のお前はやばかった(強かった)〟と言ってもらえているので、なるべく早くそこの位置にたどり着けたら」

 ――セッティング自体は去年と変わっていない?

 「はい、そのままです。自分の体、精神面がどれだけ戻ってくるか、そこに尽きます」

 ――23年11月には女児の双子が生まれ、3児のパパになった。

 「妻は僕がいない間、一人で子どもの面倒を見て、とても大変な思いをさせている。しっかり自分も前以上に子育てに参加しながら練習もしていって、というところです。その環境の中で、どう自分のレベルを上げていくか。子どもは本当にかわいい。上の子が2歳半で、下の2人が1歳半。今がいちばん、愛情を返してくれる時期。かみしめたいなと思いながら過ごしてはいます」

 ――お子さんの誕生で気持ちの変化は?

 「そこは変わらないですね。好きで競輪選手になっている。小さい頃からS級レーサー目指して頑張ろうと、この業界に入っているので、変わらず上を目指します」

 ――山田は地元記念を優勝するのはGⅠ制覇に匹敵する、と。

 「地元で完全V、しかもそれを記念でできることなんて、なかなかない。特別なものがありますが、僕はGⅠで準決勝にも上がったことがないので、その感覚がまだわからない。タイトルを取った中では一番うれしかったので、何度でも味わいたいとは思っています」

 ――最後に改めて意気込みを。

 「しっかりラインで決まるように走って、決勝に上がれば勝ちにいくレースをして、というふうにできたら。オールシーズンで去年のポテンシャルを引き出していく、というのも当面の目標。5月の武雄ミッドナイトGⅢで、これならやれる、という手応えも感じられた。昨年4月の高知GⅢでタイトルを取ったときも、決勝で清水(裕友)さんを差せたことが自信になった。強敵を倒せば自信になりますし、きっかけになるレースがしたい。応援よろしくお願いします」

 ◇阿部 将大(あべ・まさひろ)1996年(平8)6月14日生まれ、大分県杵築市出身の28歳。杵築中では陸上競技部に所属し、専門は中距離。日出暘谷高で自転車競技を始め、2014年の長崎国体ケイリン(少年)で優勝。鹿屋体大を経て、日本競輪選手養成所117回生として2020年5月の小倉ルーキーシリーズでデビュー。同年7月、別府で本格デビューし3場所連続完全VでA級2班に特別昇班。22年1月にS級へ昇級。同年3月の高知でGⅢ初制覇。昨年の別府「オランダ王国友好杯」などGⅢ通算4V。通算401戦140勝。ホームバンクは別府。師匠は山崎翼(95期)。1㍍74、74㌔。血液型A。


小岩 地元で復帰


 S級1班の地元勢として、阿部と双璧をなすのが小岩大介だ。5月のGⅠ日本選手権(名古屋)の4走目で落車。左肩を痛めて以降2場所を欠場し、ぶっつけ本番の形となる。それでも今年は4月の函館FⅠで優勝。3月の玉野GⅢでも3度の1着など、状態が戻っていれば十分にGⅢでも戦えることを示してきた。グレードレースは未制覇。阿部を筆頭に7人が出場する大分勢をもり立て、最後に笑う。

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