脇本雄太
2月全日本選抜競輪でGⅠ全大会Vを飾り、脇本はグランプリとあわせ前人未踏のグランプリスラムを達成。競輪界の歴史に名を刻んだ。6月高松宮記念杯では完全V。上がり10秒台連発の圧倒的なスピードは異次元の存在だ。
しかし、そのパワーを支える肉体は悲鳴を上げる。東京五輪出場後からの腰痛は限界に達している。7月GⅡサマーナイトフェスティバル、続く富山記念を欠場。迎えた大一番の8月オールスターも決して万全の状態ではなかった。ドリームレースはまさかの9着スタート。2走目も7着に終わる大ピンチだったが、3走目1着で踏ん張り、準決勝は2着で決勝進出を決めた。信頼する盟友の古性優作はケガの影響で厳しい走りを続け、最強両者は悲壮感を漂わせながらの勝ち上がりだった。
それでも後輩の寺崎浩平が力強く決勝入りを果たしたのは光明に。好調・南修二もいて近畿ライン4車。先頭で引っ張り寺崎のGⅠ初Vに貢献した。
「太田海也君が引いたのは見えましたが、どこまで引いたのかわからずペースを落とせなかったです。自分のできる限りのことはできました」
寺崎を祝福する笑顔は、今まで頑張ってくれた後輩に対して頼もしさと愛情に満ちたものだった。ただこの5走の激走はさらに肉体にダメージを与えた。
「終わってから脚にもしびれが出ているし今後は治療に専念します」
事実、次走の岐阜記念は休み、2013年共同通信社杯以来になる地元でのビッグレースへ向けて少しでも体の状態を戻していく構えだ。
前回より上向きが期待される古性、タイトルホルダーとなった寺崎、そして不動のエース脇本。最強ラインを結成して他地区のアタックを完封だ。最後は熱い地元の気迫で脇本がVを譲らない。