別府競輪のGⅢ「施設整備等協賛競輪」が16日から19日までの4日間、ナイターで開催される。
昨年の同時期に当地で行われたGⅢ「大阪・関西万博協賛競輪」でグレードレース初Vを飾り、唯一〝連覇〟への挑戦権を持つのが地元の大西貴晃(33)だ。8月の四日市で落車し、先月の川崎で復帰してから2場所目。手探りにはなるが、地元でのビッグレースに懸ける思いは人一倍だ。なお、出場選手は変更の場合あり。
大西貴晃
あの景色を、もう一度――。昨年の覇者として挑む大西は〝連覇〟へ向け、謙虚に語った。
「決勝に乗ることが最低条件だと思っている。決勝に乗って、九州勢から、地元勢から優勝者を出せるように頑張りたい」
昨年つかんだ栄光は、強固な結束のラインに助けられた。同県の後輩・阿部将大の番手となり、後ろには実に4車も福岡勢が付く豪華な並び。仕事を果たした上で鮮やかな番手捲りを決め、先頭でゴールラインをまたいだ。「あの歓声は忘れられない。勝ってからは名前を呼んで応援してもらうことが増えました。やっぱりうれしいです。知名度が上がったんだな、って。周りから覇者、覇者とも言われますし」と、強豪の仲間入りを果たしたことをこの1年で実感してきた。
近況は芳しくはない。半期でA級からS級に復帰したものの、8月の四日市で落車。尻の側転筋の擦過傷と打撲がひどく、約1カ月半の負傷欠場。栄光をともにしたフレームも壊れてしまった。復帰戦となった先月の川崎でも予選敗退。それでも2日目以降は連続2着で締めた。昨年の優勝時と比較すれば「今とは比べものにならない」とはいうものの「日に日に、少しずつ。練習でもバンクで乗って、タイムも悪くはない」と、復調への兆しは見え始めている。
〝初体験〟も刺激になっている。7月に玉野で行われたサマーナイトフェスティバルに3日目からの補充ながら、GⅡ初出走。「お客さん(の数)が凄かった。あんなに玉野に入るんだ、っていうくらい」と、競輪選手としての幸せをかみしめた。さらに来月の競輪祭にも出走予定で、初めてのGⅠに挑むことにもなる。「どこまで戦えるのかな、ってワクワクします。どれだけ調子をどんどん上げ切れるか」と気合十分だ。初の晴れ舞台へ弾みをつけるためにも、地元のGⅢはぜひ欲しいタイトルだ。
昨年の優勝後、それまで以上にラインの重要性を意識するようになった。A級だった前期、先行を基本に戦ったのもあの優勝があったからだ。「前後の人たちのおかげで、責任ある位置で結果を残せた。脚質を考えたら難しかったですけど、ラインのことを考えて、大切にしてきた」と自負している。「今年は(阿部)将大も獲りたいと思っているだろうし、みんなにチャンスがあると思う。少しでも状態を上向かせられるように準備したい」。九州勢、地元勢の強固な結束を念頭に置きながら、再び栄冠へ挑戦する。
◇大西 貴晃(おおにし・たかあき)1992年(平4)9月18日生まれ、大分県出身の33歳。日出暘谷高では3年時の10年に高校総体と国体の1㌔タイムトライアル、アジアカップのチームスプリントを制覇し、同年に杵築市民栄誉賞と大分県民栄誉賞を受賞。101期生として12年7月に玉野で競輪選手としてデビュー。通算成績は997戦247勝、通算優勝回数は38回(うちGⅢ1V)。師匠は菅原晃(大分=85期)。1㍍76、71㌔。血液型A。
先行予想 山田V戦線リード
SS班は不在だが、確かな実力を備えるメンバーが別府のバンクを彩る。
戦績でリードするのは競走得点最上位の山田だ。今年は2度行われた地元・武雄でのGⅢを連続V。メンバー中、今年のグレードレースを制覇しているのは山田のみで、地区別最多18人が集う九州勢の雄として、優勝戦線の中心となることが予想される。先月の奈良GⅢでも決勝進出(6着)と近況も悪くない。競走得点2位の小川、同3位の塚本はそれぞれ福岡、熊本支部所属でベスト3が九州勢となっている。
〝連覇〟を期す大西、昨年の地元記念を制覇した阿部を筆頭に、地元・大分からは都道府県別で最多の6人が出走予定。他県の得点上位者に負けじと、九州を引っ張っていきたいところだ。
九州勢に立ち向かう筆頭格が競走得点4位の中釜、同5位の上田がいる中近勢。尾方祐仁、溝口葵、上杉嘉槻ら活きのいい機動型の若手が多数。若手と中堅、ベテランが融合すれば、一大勢力となる可能性を秘めている。
GP覇者の武田を擁する関東勢にも長島大介、橋本瑠偉の栃木コンビや芦沢大輔といった実力者がそろう。北日本勢、南関勢との連係も視野に、九州勢へ挑んでいく構図だ。1班が不在の中国勢はやや不利だが、こちらも四国勢とうまく連係しながら、1車でも多い決勝進出を目指す。
別府バンク特徴
周長400㍍、直線のみなし距離59・96㍍、最大カントは33度41分24秒。癖がなく平均的な400走路といえる。冬場はバックで強い向かい風が先行選手を悩ませるため、季節の変わり目となるこの時季には注意が必要で、GⅢともなると逃げ切りは難しいのが実情。車券戦術は追い込み型が中心になる。捲りも決まるが、2センター入り口の上りで失速するケースも目立つため、3角までにハナに立つ早めの仕掛けが有効。直線は内、中、外と平均的に伸びる。