和歌山競輪の開設72周年記念「和歌山グランプリ(GⅢ)」は、9日に開幕。昨年のKEIRINグランプリ(静岡)を制した古性優作(30=大阪)らSS班4人をはじめ実力者が集結したシリーズ。強力ラインアップの地元勢や、売り出し中の吉田有希(20=茨城)ら伸び盛りの機動力型もそろい、見応えたっぷり。グランプリ王に輝いた古性優作を本命に指名したが、V争いは激戦が予想される。

GP覇者の貫禄

古性 優作

 普段は『冷静な男』が何度も大きくガッツポーズをして喜びを爆発させた。古性が「KEIRINグランプリ2021」で初出場初優勝を決めたのだ。

 単騎のレースとなったが終始、関東勢の後ろのポジション。予想通り吉田拓矢が駆けて宿口陽一―平原康多が二段駆けの展開。満を持した古性が、2角手前から鋭く踏み込んで、ひと捲り。他の選手が止まって見えるほどの圧勝劇だった。

 「全てのことがうまくいった。自分の力を一滴も余すことを出せた」と全身全霊の走りでVを奪い、大阪勢としては史上初のGP制覇を果たした。

 21年の前半は3月大垣、続く松阪のGⅡで惜しく決勝2着。グレードレースであと一歩のところで優勝を逃したが、7月福井記念で約2年半ぶりのGⅢ制覇。これで勢いが加速。8月平オールスターで見事GⅠウイナーとなった。東京五輪から中0日の強行軍で参戦した脇本雄太との近畿タッグ。打鐘から圧巻の逃げを打った脇本を差し切ってのVゴールだった。

 「脇本さんを差すことを目標にしていた」と話したが、今後は「(脇本と)別になっても、しっかり戦えるように」と意識が変わった。その集大成が、単騎でGPを制した走りだった。

 BMXで培ったハンドルさばきは定評が高く、ヨコもタテも強い究極の〝オールラウンダー〟としての地位を確立した。

 22年の走り初め。1番車のチャンピオンジャージーを身にまとい、突っ走る。

大器をアピール

吉田 有希

 犬伏湧也ら次代を担う好素材がそろう119期生。その中でも出世頭が吉田有希。小倉競輪祭でGⅠ優勝を果たした拓矢(茨城=26・107期)を兄に持つ良血だ。

 在所順位は13位ながら、7月からの本デビューから負けなしの18連勝。同期ではS級へ特別昇級一番乗りを果たした。特別昇級後、2場所もそれなりの結果を残したが、3場所目から3連続優勝を飾るなど、大器ぶりを遺憾なく発揮した。

 昨年末の静岡のグランプリシリーズ「寺内大吉記念杯」は1④1着。予選は順当に逃げ切り勝ち。準決も本命人気に推されたが、先行するところを野原雅也の強烈捲りを浴びる。番手にはまって態勢を立て直したが、伸び切れず4着敗退。

 4連続Vの夢は破れたが、最終日の実戦が見事だった。気迫の突っ張り先行に出た南潤と鐘前からもがき合い。外、外を回らされる苦しい態勢。飛んだかに見えたが、外でへばりつきながらバックから強引捲り。番手の村田雅一のブロックを乗り越えて1勝。そのスタミナとパワーは驚異的。

 「やっぱり難しい。上位の人はうまくて強い」とS級の壁を肌で感じたが、潜在能力の高さを証明。

 注目の大型ルーキーとして22年は、さらに大きな飛躍が期待される。初の記念出走になるが、豪快な走りでファンにアピールだ。

地元で復活を

南 潤

 南潤は111期の逸材として順調にトップクラスへの道を歩んでいたが、最近は低迷。今期は2班落ちで、競走得点も100点ちょっととスランプに陥っている。「体の使い方とか、自転車に乗れていない感じがあって、セッティングをいじっていた」と迷走した。ただ、昨年11月の武雄記念で「ステム(ハンドルバーをつなぐパイプ状の部品)を伸ばしたら新鮮な気持ちで走れました」。復調の手応えをつかんだ様子。昨年末、静岡の最終日に売り出し中の吉田有希と壮絶にもがき合った走りは、本来に近い姿だった。「和歌山記念は自分にとって特別な大会」と気持ちが入る。元々、定評のあるスピード派。持ち前の快速全開で、復活のシリーズにしたい。 

 21年の古性は充実した1年だった。8月・平オールスターでGⅠ優勝。初出場の静岡グランプリを見事な走りで制し、3年ぶりの2億円超えで賞金王に輝いた。輪界屈指のオールラウンドプレーヤーとしてトップに君臨。自力でも強いがヨコへの対応も厳しい。近畿地区の一戦だけに主役は譲れぬ。ガッツマン南修二が僚友・古性を徹底ガード。

 ナショナルチームに所属する寺崎のダッシュ力も一級品だが、地元勢が強力布陣を敷く。それを束ねるのが東口だ。自身の威力のある決め脚は依然V圏内。稲毛健太、中西大、石塚輪太郎、南潤らの機動力型に、差し良い椎木尾拓哉と連係しての台頭は十分。

 昨年の松浦はGⅠ最高峰の日本選手権優勝をはじめ輪界を引っ張った。後半戦はちょっと中だるみ状態になったが、きっちり立て直した。年末のグランプリは清水裕友と共倒れで結果は出なかったが、第一人者の地位は揺るがない。ライン的に手薄な印象は拭えないが、展開に対応した攻めで突破へ。過去、和歌山バンクはGⅢ2Vと得意な走路。中国勢・岩津裕介を連れて主役に躍り出るか。

 郡司も3年連続でSS班の座をキープするなど、押しも押されもせぬ輪界トップの実力者。7月函館GⅡのサマーナイトフェスティバル以降に体調を崩したが、今は本来のデキに近い。ライン戦もこなすが。本領はスピードに乗った自力戦。当地では好戦歴を残す点、機動力をフルに発揮。健在を示す和田を連れて首位争いを展開。

 45歳を迎えても衰えを見せない佐藤慎は、まさに鉄人。北の大砲・小松崎との連係成功ならもちろん、思惑外れてもコースを見いだし突っ込んでくる。

 今シリーズの注目は119期の新星・吉田有だ。GⅢ初参戦ながら、気後れせず強じんなパワーを生かして果敢にぶっ飛ばそう。同県の御大・武田豊樹を連れて風雲を呼ぶ場面は注。もちろんスピード復活の長島も怖い。得意の捲りだけでなく、先行しても力を発揮する点、魅力的な存在。

 九州勢では荒井が健在ぶりをアピール。昨年末の静岡「寺内大吉記念杯」を制した強烈なスピードは圧巻だった。捲りの機動力も温存する点、上位進出も十分だ。坂本の威力のある決め脚は無論、昨年10月の熊本記念(in久留米)でGⅢ初Vを飾った嘉永の逃げ脚も魅力いっぱい。快速自慢の松本や、野田源一の豪快弾も混戦なら不気味だ。