自転車競技の日本代表として20年東京五輪でのメダル獲得が期待されるガールズケイリンの小林優香(25=福岡)と太田りゆ(24=埼玉)は現在、五輪会場の伊豆ベロドローム(静岡)を拠点として強化合宿を続けている。ガールズケイリンで圧倒的な強さを誇る小林と、現在売り出し中の太田を00年シドニー五輪競泳女子400メートルメドレーリレー銅メダルのスポーツコメンテーター・田中雅美さん(40)が直撃。自身の経験を交えながら、現在の心境や東京五輪にかける思いについて鋭く迫った。


田中 よろしくお願いします。五輪の開幕まで500日を切り、ワクワクしていると思います。東京開催だからという思いはありますか。
小林 競輪学校にいる時に東京五輪が決まり、運命を感じました。ガールズケイリン入ったのも12年ロンドン五輪の男子のチームスプリントを見たからです。バレーボールをしていて身長が伸びず悩んでいて、〝この種目なら自分も五輪に行ける〟と。絶対に手にしたいチャンスだと思っています。
太田 自国開催はすごく大きい。一生に一度ですし、チャンスがあるなら、とがんばっています。
田中 今季を終えていかがでしたか。小林さんはW杯第3戦で自身、女子ケイリン初の銅にアジア選手権でも金。太田さんはW杯第6戦で自身、女子ケイリン初の銀メダルを獲得しました。
小林 ±0ですね。W杯でメダルを獲れてほっとし、アジア選手権も勝てて自信になりましたが、世界選手権では足では負けていないのにメンタルで負けました。五輪まで一年もない。自信を持っていかないといけなかった。悔いも残り、悔しいシーズンでした。
太田 全体的に見ればがんばったシーズンでした。1年目は結果が出ず、2年目の昨シーズンは1、2戦でダメだったら代表を辞めようという覚悟でした。1、2戦でちゃんとレースができ、アジア選手権も4位で手ごたえがあり、その後W杯で銀メダルが獲れて良かったです。世界選手権は足が足りず、練習しなきゃ、と割り切れる負け方でした。後は足をつけるだけです。
田中 2人はチームメイトでもありライバル。互いはどんな存在ですか。
小林 年は私が1つ上ですが、関係ありません。お互い助け合っていてけんかもありません。〝負けないぞー〟という感じです。私は長い距離をもがけるタイプですがりゆちゃんはダッシュ系。すごいなと思っています。
太田 ライバルと言うよりは優香ちゃんの方が全然強いので、〝ちょっと待ってー〟という感じです。
田中 私が現役の時も記録競技で対人ではないのでチームメイトとは仲良くやっていました。同級生の岩崎恭子ちゃんと恋愛話をしたり。ブノワ氏の指導はいかがですか。技術面などの変化は。
小林 私はチームで一番泣かされ、怒られています。メンタル面を言われます。信頼しているのでくらいついていきます。技術ではハロンの持ちタイムが1・5秒上がりました。ダッシュが苦手ではなくなった。体重は落としなさいと指示があり、83㌔あったものが、今は65㌔です。
太田 一緒に五輪を目指そうと誘ってくれたのは彼。信頼しています。体重を7㌔増やしました。脂肪ではなくいい感じについています。
田中 私は現役最後の4年間の2年半米国のコーチに教わったのですけど、やはりメンタル面で影響を受けました。レースが終わった時に一番にやることは結果を見ることではなくその前に100%でできたかどうかだ、と。話は変わりますが、2人はお化粧をきれいにされていますよね。
太田 私はいつもばっちりメイクです。いろんな化粧品を持ちあさって、これいいな、ちょっと塗らせて、と優香ちゃんと遊んでいます。オフに髪の毛もピンクに。
小林 最近はりゆちゃんのおかげでおしゃれにも目覚めました。お化粧も覚え出して。いつもの練習はすっぴんですが、きょうは気合を入れてきました。
田中 リフレッシュタイムも大切ですよね。さて、五輪の出場がいよいよ決まる次のシーズン。一戦一戦をどんな思いで戦っていきますか。
小林 世界選手権が終わった後、コーチから五輪王者になる前に世界王者として五輪を迎えなさいと言われ、自分でもそうしたいと思っています。「I hope」を「I want」にして、絶対獲る、という気持ちでやります。
太田 人を使って最後を狙うという戦法でやって来ましたが、自分で前を走る力もつけていこうというのが今年の目標です。まずは基礎からもう一度と考えています。
田中 東京五輪は本当にうらやましいです。挑戦できることを誇りに思っていただきたい。努力を日々続ければ、きっと結果はついてきます。私の最後の五輪は200㍍平泳ぎ4位でしたがやり切ったと思えたので誇りになりました。誰の人生でもない2人だけの人生だから、後悔のない日々を重ねて東京五輪を迎えて欲しいと思います。ありがとうございました。

 ♡小林 優香(こばやし・ゆうか)1994年(平6)1月18日生まれ、佐賀県鳥栖市出身の25歳。14年5月デビュー。通算202戦182勝、2着9回。通算58V。15年ガールズグランプリ優勝。14、15年ガールズ最優秀選手賞。競技では昨年12月のW杯第3戦(ベルリン)女子ケイリンで銅、今年1月のアジア選手権女子ケイリンで金メダル。師匠は藤田剣次(福岡・85期)。ホームバンクは久留米。1メートル64、64キロ。
 ♡太田りゆ(おおた・りゆ)1994(平6)8月17日、埼玉県上尾市出身の25歳。17年7月デビュー。通算45戦25勝2着4回。通算Vは7回。競技では今年1月のアジア選手権女子ケイリン4位入賞、2月のW杯第6戦(香港)女子ケイリン銀。師匠は早川成矢(埼玉・78期)。ホームバンクは大宮。1㍍66、65㌔。

 

田中さん編集後記

 オフでも早く練習に向き合いたいという思いなど、五輪に向けた覚悟を強く感じました。結果に追われていたりしているとネガティブに考えたりしがちですが、明るさやポジティブな雰囲気も印象的でした。お互いにいいリフレッシュタイムを持っていたり、刺激しあっていて2人の関係性もすごく絶妙。今世界で活躍している若いアスリート達は皆すごく楽しんで、自分に挑戦している。後から結果と言った人が多い。まさにそういう2人になるのではとワクワクしています。東京五輪の出場権を獲得して、メダルのあるなしではなく、しっかりとここでやり切ってくれるでしょう。
 

 ♡田中雅美(たなか・まさみ1979年(昭54)1月5日、北海道遠軽町生まれの40歳。女子競泳・平泳ぎの代表として96年アトランタ五輪で五輪初出場。00年シドニー五輪は100㍍6位、200㍍7位、女子400㍍メドレーリレーで銅メダル。半年間の休養、米国留学を経て復帰、04年アテネ五輪の200㍍4位となり、05年に引退。現在はスポーツコメンテーターとして活躍。
 

シ烈な出場争い

 全6種目、男女計189人が出場できる。開催国枠はなし。18年7月6日から20年3月1日までのW杯、各大陸選手権、世界選手権で付与されるUCIポイントの上位国に出場枠が与えられる。
 
 女子のケイリン、スプリントはチームスプリントの上位8カ国からそれぞれ2人が出場でき、さらに2種目それぞれの上位7カ国(チームスプリントで出場枠を得た国を除く)に1人ずつの出場枠が与えられる。上位7カ国としてケイリンで出場枠を得た選手はスプリントに、スプリントで出場枠を得た選手はケイリンにも出場できる。
 
 日本は現在チームスプリントには参加しておらず、ケイリンが5位、スプリントが17位。現状のままならケイリン上位7カ国としてケイリンとスプリントに同じ選手が1人出場できる。スプリント上位7カ国での出場枠も十分に射程圏内と言える。