2021年東京五輪重量挙げ男子67㌔級7位で福島県三春町出身の近内三孝(29)が、競輪界のトップを目指す。
日本競輪選手養成所の第129回(男子)選手候補生入所試験(特別選抜)にこのほど合格し、4月16日に静岡県伊豆市の養成所に入所。重量挙げで鍛えた瞬発力を生かして来年3月まで訓練に励み、プロデビュー、そして最高峰のSS級昇格へと走り続けていく。
競輪でトップを目指す近内
29歳養成所合格
目指すは最高峰SS級
その手をバーベルからハンドルに持ち替え、近内が新たな舞台に挑む。「入所予定の70、80人の中で今は一番下だと思っている。早く慣れることが先決。ゴールデンキャップをかぶれるように頑張りたい」と意気込んだ。
養成所では実力に合わせ、一番上の「金」から「青」までの5段階にクラス分けされ、報奨金の額も違ってくる。ピストバイク経験がほとんどない近内は、経験者の「技能」組より約1カ月早く入所し、まずは自転車のイロハから学ぶ。「力だけでは通用しないスポーツ。無駄な力を使ってペダルを回してしまい、すぐに疲れが来てしまう。踏み方を考えながら練習しています」と充実した表情でバンクを見つめた。
大学時代から勧誘
実は日大3、4年の頃から、師匠となる同級生の坂井洋(30、115期)を通じ転向を誘われていた。昨夏のパリ五輪を重量挙げの区切りと考えていた近内は五輪切符を逃し「モチベーションがなくなった」。その時、ふと坂井の誘いを思い出した。瞬発力を生かした縦方向への推進力と背筋力は自転車に通じるところがあり、競輪の資料を調べる中で「特別選抜試験」を知り受験を決意した。
重量挙げ選手時代
パリ五輪出場逃がし契機に
本格的に練習を始めたのは1月下旬。週に4、5日のバンク練習で競技用自転車に慣れることから始めた。プロ選手が主に使う3.9倍のギアにはまだ乗れず、それよりも軽い3.7倍くらいの自転車で汗を流し、バイクの後ろに付くスピード練習では、60㌔のスピードでラストの瞬発力を強化している。
順調にいけば来年3月以降にデビュー予定。「まずはS級に上がって坂井選手と一緒にレースで走ることが目標。その後はSS級を目指したい」。取材での写真撮影時、自転車を重量挙げのように高く持ち上げるポーズのリクエストには「優勝した時に取っておきたいので」と笑った近内。来春にはその姿が競輪場で見られるはずだ。(田中 幸夫)
練習拠点の宇都宮競輪場でスピード練習
◇近内 三孝(こんない・みつのり)1996年(平8)3月14日生まれ、三春町出身の29歳。田村高から重量挙げを始める。13年インターハイ62㌔級で優勝。21年4月のアジア選手権で6位入賞。同年、67㌔級の世界ランキング6位で東京五輪代表に選出。1㍍67、70㌔。
▽特別選抜試験 日本競輪選手養成所の試験は技能、適性、特別選抜の3種類。技能は自転車競技経験者が受験し、適性は未経験者。特別選抜は「スポーツ競技において世界レベルの実績がある者」が条件で五輪や世界選手権などの入賞者などが該当。第129回では近内を含め3人が合格。自転車以外の競技での五輪出場選手の合格は原大智(18年平昌冬季五輪モーグル3位)以来で重量挙げからは初めて。