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【記者コラム】人としても超一流だったプリンス平原さん

 平原康多が突如としてバンクを去った。長らく競輪界を引っ張ってきた存在。平原康多がいない、ということに慣れるには時間がかかるだろう。ぽっかり穴があいた。GⅠ9Vという実績はもちろんだが、〝関東のプリンス〟が凄かったのは自転車にまたがった時だけではなかった。

 一報が入ったのは青森全プロの前検日。ゆかりのある選手たちに思い出を聞いた。高校の後輩でもある宿口陽一は「競輪選手の前に人として正してくれた」と感謝。また、幾度となく連係した諸橋愛は平原の話になると、持っていた荷物を置き一層真面目な表情で「人間として魅了されるし、ひかれる存在だった」と証言。競輪は人が走るから面白い。選手である以前に人として超一流だった。「そういう人間だから悲しむ人は多いでしょう」と諸橋の言葉にはうなずける。

 取材にもいつも爽やかな笑顔で対応してくれた。引退の報を聞き急きょ電話をかけた。23年の競輪選手生活にピリオドを打つ日。そんな大事な日にも「全然、大丈夫ですよ」といつもの優しい声で対応してくれた。それもカチッ、カチッ、カチッという音が聞こえる。「たった今手帳を返してきました」。音の正体は車のウインカー音で、帰宅途中の車内でハンズフリーの状態にし対応してくれた。改めて人柄にほれた。

 その電話取材の最後、ファンとしてもあまりに寂しい気持ちになり、思わず〝今後ともよろしくお願いします!〟と伝えた。すると「はい!こちらこそよろしくお願いします」と社交辞令とは思えない声で返してくれた。佐藤慎太郎の言葉を借りれば「〝競輪伝道師〟は平原」。競輪界を引っ張ってきたプリンスは、また大好きな競輪を支えてくれるに違いない。平原さん、お疲れさまでした。そして感動をありがとうございました! 

 ◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の29歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。22年は中央競馬との二刀流に挑戦。23年から再び競輪一本に。競輪に興味を持ち始めた時に競輪好きな父に言われたのは〝平原と武田を狙っとけばいいから〟。

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