16日決勝の函館記念は嘉永泰斗(25=熊本、写真)の優勝で幕を閉じた。
函館記念は平塚ダービー準決勝で落車した郡司浩平(神奈川)と守沢太志(秋田)の負傷欠場でSSは新田祐大(福島)1人の開催になった。当然、グランドスラマーの新田が主役を務めたが、開催を盛り上げたのが嘉永と犬伏湧也(徳島)の2人だった。
初日特選は犬伏が打鐘先行、嘉永が7番手捲りで見せ場をつくった。嘉永と犬伏は二次予選と準決勝で10Rと11Rの主役を務めた。二次予選10Rの嘉永は最終H7番手から巻き返して1着。同11Rの犬伏は打鐘7番手から仕掛けて1着。断然の1番人気に応えた。
準決勝10Rは犬伏が打鐘7番手から仕掛けて2着。犬伏を差した小倉竜二が「犬伏君が本気で踏んだら切れていた」と振り返るように犬伏はラインを気遣う仕掛け。同11Rは嘉永が最終H前7番手から巻き返して1着。新田メインの12Rを前に両者は10Rと11Rで本命らしい走りを見せた。
決勝戦は打鐘過ぎ4角から仕掛けた犬伏を最終Hから巻き返した嘉永が直線で捉えて優勝。嘉永の上がりタイム10秒7は95年6月に神山雄一郎が記録した10秒8を28年ぶりに更新。2着が新田、3着が犬伏で今大会を盛り上げた3人で上位独占。シリーズの売り上げは48億6350万8500円で目標の50億円に届かなかったが、郡司と守沢の欠場を考慮すれば〝嘉永と犬伏の健闘があったからこそ〟の数字とも言える。
嘉永は3月・別府ウィナーズCの決勝戦進出をはじめ今年の充実ぶりが著しい。九州学院高校の先輩でもあり師匠の倉岡慎太郎(熊本)は「(嘉永)泰斗の一番の良さはメンタルの強さ。考えたレースをしているし、ワンランク上を目指す走りができる」と評する。デビューから5年、着実に力をつけている嘉永は〝9車の競輪〟ができる、今後の飛躍が楽しみな1人だ。
◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)生まれ、熊本県出身の60歳。慶大卒。87年4月入社、同5月から競輪記者。記者デビュー戦は花月園(59期の新人リーグ戦)。嘉永の師匠・倉岡慎太郎(熊本)のデビュー戦でもあった。ちなみに59期生の在校成績1位は倉岡。