名古屋競輪場で開催中の日本選手権は「競輪ダービー」と呼ばれ、GⅠ6大会の中で最高峰にランクされる。大きな理由は出場選手がGⅠ最多の162人、選手選考期間が最長の1年間。また、他の5大会と異なり6日制開催が続いている。(競輪祭と高松宮杯は6日制→4日制→6日制)。
162人が6日制で戦うシリーズは当然、勝ち上がりが厳しい。特に2着権利(3着は4人)の二次予選が激戦区。また、最終日まで走れる選手は99人。この厳しさがレースの迫力につながり面白い。6日制に戻した競輪祭と高松宮杯の出場選手は現在108人。これは4日制時代と同じ。売り上げ堅調の今なら出場選手数を戻すこともできる。勝ち上がりの厳しさはGⅠの格と迫力に必要だ。
「神山雄一郎氏のGⅠ優勝16回を振り返る」(以下、敬称略)の6回目は97年。神山は9月の平塚オールスターで初めてファン投票1位に選出された。92~96年は吉岡稔真(福岡=引退)が5年連続で1位。「人気では吉岡君に勝てないのかな…」と思う神山が「表彰式でファンに御礼を言いたい」という強い気持ちで臨み〝ファン投票1位で優勝〟という結果を出した。続く10月の前橋寛仁親王牌は96年に続いて連覇。そして11月の小倉競輪祭は吉岡らを破り優勝、GⅠ3連続優勝の偉業を達成した。神山は小倉競輪祭を95年から3連覇。吉岡も92~94年に小倉競輪祭3連覇を飾っており、この記録も「東西横綱時代」を物語る一つだ。
95年2着、96年2着を経て〝今年こそは…〟で挑んだグランプリはまたもや2着。それでも神山の97年取得賞金は2億2857万円で、競輪界初の2億円超えとなった。92年から賞金王は吉岡、神山、吉岡、神山、吉岡、そして神山。97年当時は神山29歳、吉岡27歳。全盛期の東西横綱対決が最大の焦点だった。
◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)熊本県八代市出身の62歳。慶大卒。87年5月の花月園新人リーグ(59期生)で競輪記者デビュー以来、現場取材一筋38年。デビュー戦から見た選手で最強は神山雄一郎、最速は吉岡稔真。