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【記者コラム】北井のGI初Vで思い出す〝師弟の絆〟

 16日決勝の第75回高松宮記念杯は北井佑季(34=神奈川)のGⅠ初制覇で幕を閉じた。北井の優勝劇、略歴は17日付けの本紙に掲載通り。北井のインタビューを見たファンは感じたと思うが北井は誠実な選手。私も多くの選手を取材してきたが北井は「記者も応援したい選手」の1人だ。

 北井の優勝直後に師匠の高木隆弘(神奈川=64期)の顔が思い浮かんだ。高木は競輪選手を目指す北井を紹介されると「半年間、付きっきりの指導と練習」で競輪養成所に合格させた。その後も「記事にするのはちょっと…(笑い)」と言うくらいに厳しく鍛え上げた。もちろん愛弟子に強くなってほしいという師匠の思いからだ。

 高木も師匠の小門道夫さん(神奈川=引退)の指導と自身の猛練習で93年の青森全日本選抜でGⅠ初優勝を飾った。高木の時代の師弟の多くは師匠と共に生活した。高木は兄弟子らと師匠の家に5年間住み込んだ。現在では想像できないだろうが、当時の若手選手の住所は「◯◯様方」。もちろん◯◯とは師匠の名前。携帯電話はなく若手選手への連絡方法は◯◯様に電話を取り次いでもらうことだった。

 高木のGⅠ初優勝直後には私の先輩が師匠の小門さんに電話取材した記憶がある。それから31年。今度は私が高木に弟子の電話取材をした。「自分のこと以上にうれしい」と高木の声は弾んでいたし、電話の向こうには〝トカちゃんスマイル〟(オールドファンなら分かる)を感じた。

 師匠と弟子。高木の時代は弟子の優勝に涙する師匠の姿を何度も見た。もちろん弟子が師匠に対して感謝の言葉に詰まるシーンも同じ。GⅠ3勝の高木が自身の経験も踏まえて育てた北井との優勝劇は競輪の魅力の一つである〝師弟の絆〟を思い出させてくれた。

 ◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)生まれ、熊本県出身の61歳。慶大卒。87年5月の花月園新人リーグ(59期生)で競輪記者デビュー。鬼脚・井上茂徳の追い込み、怪物・滝澤正光の先行に即、魅了された。以来、現場取材一筋37年。

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