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【記者コラム】声援が盛り上げるグランプリシリーズ

 KEIRINグランプリ2023は松浦悠士(33=広島)の優勝で幕を閉じた。

 「グランプリシリーズ」と呼ばれる12月28~30日の3日間開催は記念に迫る見応えのあるS級戦として定着した。グランプリが始まった85年当時は普通競輪(A級とB級)で開催、90年代にS級シリーズ(S級とA級)になり、そして08年からオールS級戦の〝スーパーFⅠ〟開催になった。

 グランプリシリーズのS級決勝戦は大一番の直前(23年は45分前)の発走。それだけに多くのファンが見守る。91年のS級戦で優勝を飾った吉岡稔真(福岡=引退)は「スタンドに独特の雰囲気があった。自分のレース(S級決勝)が終わるとファンがどんどん増えて地鳴りがした。自分も来年はグランプリを走りたいと強く思った」と振り返った。〝多くのファンの前で走る〟というプロ選手の意識を植え付けるシリーズだ。吉岡は翌92年にグランプリ初出場Vを飾った。

 23年の立川グランプリシリーズは「グランプリ覇者」の井上昌己(08年)、村上博幸(10年)、金子貴志(13年)、三谷竜生(18年)が出場。井上と村上は準決勝で1着を飾りスタンドを沸かせた。ここでもファンの声援がスター選手を後押しした。

 30日のS級決勝を優勝したのは小林泰正(29=群馬)。「(同期の)真杉に刺激を受けたし、来年は真杉と並んで走りたい。そしてこの舞台(グランプリ)を目指したい」。小林にとって今後につながる貴重なシリーズになったはずだ。

 20年2月末から新型コロナの感染防止で無観客の景色を見続けたが、23年末の立川グランプリシリーズで〝ファンの声が選手を育てる〟ことを改めて感じた。

 売り上げ第一で無観客のミッドナイト、モーニングも理解するがプロ選手はファンの前で競うことが大前提。コロナ禍以前を知らない関係者も増えたが、競輪事業に明るい施行者も各地にいる。「ファンの前で走る」ことは競走のレベルアップにもつながる。

 ◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)生まれ、熊本県出身の61歳。慶大卒。87年4月入社、同5月の花月園新人リーグ(59期生)で競輪記者デビュー。怪物・滝澤正光の先行、鬼脚・井上茂徳の追い込みに即、魅了された。以来、現場取材一筋37年。

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