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【記者コラム】新田 輪史に残る偉業23年ぶりグランドスラム

 10月・前橋親王牌優勝で新田祐大(36=福島)がグランドスラムを達成した。この記録がどれだけの偉業かは「神山雄一郎以来、23年ぶり」に集約される。

 私が記者デビューの翌年(88年)6月の高松宮杯で井上茂徳氏(佐賀=引退)が初代グランドスラマーに輝いた。当時の特別競輪全冠制覇は日本選手権、高松宮杯、オールスター、競輪祭、85年8月開始の全日本選抜で5つ。井上氏の快挙をテレビ東京の実況中継で見た記憶が残る。そして〝ミスター競輪〟と呼ばれた中野浩一氏(福岡=引退)は高松宮杯だけ縁(優勝)がなかった。

 2代目のグランドスラマー誕生は90年11月の小倉競輪祭。滝沢正光氏(千葉=引退)が鈴木誠氏(千葉=引退)の逃げに乗り偉業を達成。その決勝戦前日の共同会見。井上氏が「私が先行(鈴木)の番手に行けば(滝沢)正光も厳しいだろうが、正光は私がついた時も気持ち良く先行してくれる選手。別線勝負で(自分以外のグランドスラムを阻止できるよう)全力を尽くす」という競輪道に魅了された。

 3代目のグランドスラマー誕生は99年3月の静岡ダービー。94年10月から寛仁親王牌がGⅠ格付けとなり、GⅠ6大会優勝が特別全冠制覇の条件となっていた。92~00年の9年間の最優秀選手賞は神山雄一郎が6回、吉岡稔真氏(福岡=引退)が3回という「東西横綱時代」。当時は神山がダービー、吉岡がオールスターを〝勝てば特別全冠制覇!!〟の見出しが主だった。

 99年3月の静岡ダービーを優勝した神山は「井上さん、滝沢さん、そして自分。競輪道(を極めた)かな」と喜びを表した。この静岡ダービーで井上氏が引退、記録と記憶に残るGⅠの一つだ。一方、吉岡はファン投票第1位を10回も獲得したオールスターだけ、なぜか縁がなかった。

 スーパースターたちがグランドスラムの難しさ、そして重みを残してきた。新田の偉業は輪史に刻まれた。

 ◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)生まれ、熊本県出身の60歳。慶大卒。87年4月入社、同5月から競輪記者。以来、現場取材一筋36年。東日本の競輪場所在地の雀荘、パチンコ店、宝くじ売場はほぼ把握している。

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