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【記者コラム】神山伝説の始まり93年9月オールスター

 神山雄一郎氏(56)が昨年12月に引退。88年5月デビューから36年7カ月の選手生活に別れを告げた。私も含めたオールドファンは「神山ロス」がしばらく続く。神山氏の引退記事は昨年12月25日付の既報通りだが、書き足りない内容もある。16回のGⅠ優勝を当時の状況を交えて振り返る。(以下、敬称略)

 神山が会見で「うれしい1勝」に挙げたのが93年9月の宇都宮オールスター。師匠の荒川博之(引退)と抱き合って号泣。優勝インタビューでも涙が止まらず、詰めかけたファンももらい泣きした。

 「初めての特別競輪優勝」だったことが理由の一つだが、当時の背景もある。91年にグランプリ初出場をはじめ、順調にスター街道を駆け上がった神山。〝タイトルは時間の問題〟と誰もが疑わなかった。

 しかし、90年5月デビューで2歳下の吉岡稔真(福岡、引退)が92年3月に前橋日本選手権を優勝。また、92年グランプリは吉岡が神山をねじ伏せて制覇した。93年3月の立川日本選手権は2歳下の海田和裕(三重、引退)が、同年8月の青森全日本選抜は1歳下の高木隆弘(55=神奈川)が優勝。高校時代からエリート街道を駆け上がった神山は、後輩選手に相次いで先を越されるとは思ってなかったはずだ。

 「獲れないのかな…」。多少の焦りが出始めた状況で迎えたのが地元宇都宮オールスターだった。決勝戦には海田と高木の名前も。特に高木を軸にラインを組んだ神奈川勢は強力だった。出口真浩(引退)を先頭に高木―山田英伸(引退)―佐々木龍也(引退)の結束。何と4人全員が法政二高出身者(この記録は破られることがないだろう)。出口が駆けて高木が番手から出る展開。神山はこの布陣を破って真っ先にゴールを駆け抜けた。この1勝が神山氏を本格化させる始まりだった。

 ◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)熊本県八代市出身の62歳。慶大卒。87年5月の花月園新人リーグで競輪記者デビュー。以来、現場取材一筋38年。デビュー戦から見た選手で最強は神山雄一郎、最速は吉岡稔真。9車の勝負レースは5車の結束、番手捲り。

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