大先輩の姿と重なった。デビュー2年目の菊池翔(28=福島・119期)はサッカーで世代別日本代表に選ばれたエリート。その身体能力の高さを武器に、119期10人目でA級1、2班に特昇した。ただ、「勝ちに徹した」という走りは、期待の高さからするとスケール感で物足りなかった。それが、久々に取材すると走り方、考え方から変わっていた。
4~6日の立川モーニング初日。菊池は前受けから打鐘過ぎで後方になると、すかさず巻き返した。そのまま逃げ切り、ラインでワンツー。「詰まったら行くという心がけているレースができました」と力強く語った。以前ならためらったような場所での仕掛け。理由を聞くと「同県の大先輩を意識しました」。すぐに誰だか分かった。
小松崎大地。40歳になった今も北の機動型として、第一線を張っている超一流。ラインを大切にする仕掛けで、凡走の少なさは輪界1、2位を争う。菊池はその小松崎に教えられた。「3月の一緒になった川崎で初日にカマして後ろの地元勢をちぎってしまった。その時に〝おまえはラインとして負けたんだ。ラインの人に差されて2着ならおまえの勝ちだ〟。重みが違いました」。感銘を受けた。誰よりもラインを大切にする男の言葉で28歳は変わった。心なしかお尻を上げながら屈強な上半身で馬力を生む。それでいてぶれないフォームは小松崎と重なった。
「かっこいいんです。雰囲気から違いますし、一緒に練習するだけで場の空気が引き締まる」と菊池の小松崎への憧れはやまない。今の菊池にとって、もちろん結果を残すことが大切な目標ではあるが、もう一つある。「小松崎さんに褒めてもらいたいですね」。認めてもらえる日はきっと近い。
◇渡辺 雄人 (わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の27歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。今年から中央競馬との二刀流に挑戦。愛犬の名前は「ジャン」。記者になる前から小松崎の大ファン。パソコンのデスクトップ画面は小松崎との2ショット写真。