平原がダービー初制覇。令和6年能登半島地震復興支援競輪、大阪・関西万博協賛GⅠ「第78回日本選手権競輪」の決勝戦は5日、いわき平競輪場で行われ、平原康多(41=埼玉・87期)が優勝。賞金8900万円(副賞含む)と「グランプリ2023」(12月30日、静岡)の出場権利を獲得した。平原のGⅠ優勝は21年10月の寛仁親王牌以来、3年ぶり9回目。この優勝でグランドスラム(特別競輪全冠制覇)までオールスター競輪を残すのみとなった。
苦しみ抜いた先には再び栄光が待っていた。関東地区をまとめ上げてきた総大将・平原が復活V。表彰式ではファンから万雷の拍手と祝福が飛び交い「涙をこらえるので必死です」。目頭を熱くした41歳は、涙をこぼさないように晴天の空をそっと見上げた。
仲間の力を信じ抜いた。前を託した吉田拓が「一番強い」と後輪だけを見つめた。ラスト1周。関東で別線勝負を選択した小林が逃げ込むところへ吉田拓が猛然と襲いかかる。「拓矢は1回踏める態勢に入ればどこからでも行っちゃう。ゴール前は拓矢の伸び具合とタレ具合を判断しながら踏んだ」。400バンクで全国3番目の長さを誇る直線を一気の抜け出し。GⅠ9回目のVゴールを駆け抜け、悲願のダービー王の座を射止めた。
笑顔に包んだ満身創痍(そうい)。体は悲鳴を上げていた。「競輪界がスピード競輪になって何年も追いかけてきて、それで体を壊した部分と落車で壊した部分がある」。高速化した競輪に対応するため試行錯誤。昨年は度重なる落車にも苦しめられ、14年から10年間、守り抜いたS班の座から陥落した。だが、体はボロボロでも闘志と探究心だけは衰えない。今大会は10年前に乗り込んだフレームを投入。昔の動画を何度も見直し乗車フォームも気持ちも〝若返り〟に成功した。
「元々の自分を取り戻せた1年だったと今は感じている」。苦しい時期をバネにしてS班へ即返り咲いた平原。グランドスラムへオールスターを残すのみとなったが「日本選手権競輪優勝が一番の夢。今は考えられないです」。トレードマークの柔和な笑みが、ひときわ輝いた。
◇平原 康多(ひらはら・こうた)1982年(昭57)6月11日生まれ、埼玉県狭山市出身の41歳。県立川越工高卒。02年8月プロデビュー。通算成績は1553戦505勝。通算取得賞金は16億7423万円。主な優勝は第60、61回高松宮記念杯(09、10年)、第51、56、58回小倉競輪祭(09、14、16年)、第28、32回全日本選抜(13、17年)、第30回寛仁親王牌(21年)、第78回日本選手権(24年)。1㍍85、95㌔。血液型A。
◆次走 優勝した平原康多は小田原FⅠ(18~20日)、2着の岩本俊介は弥彦FⅠ(13~15日)、3着の古性優作は函館GⅢ(16~19日)。