まさにシンデレラボーイ。5月の京王閣ダービーでGⅠ2度目、ダービー初出場ながら決勝に駒を進めた真杉匠(22=栃木・113期)。ついこの間までミッドナイトを走っていた22歳が今年一気に名前を売った。「昨年よりは成長できた」と言うが真杉はまだ満足していない。
火をつけたのは栃茨の同世代。「拓矢(吉田)さんの競輪祭の優勝はだいぶ刺激になった。いろいろアドバイスをもらったこともある先輩。それに坂井(洋)さんが記念を勝ったのも。自分もタイトルを獲りたいという気持ちが強くなった」。身近にいた存在が遠くにいってしまったような気持ちだったのだろう。すぐそこにいた人が成し遂げたことでタイトルが現実味を帯びた。それに、もう下の世代も出てきている。「吉田有希!。あれはヤバイですよね。付いてみたい」。拓矢の弟でデビュー半年で既にS級3Vの超新星。下からの突き上げも始まっている。満足も、止まってもいられない。先輩たちに続け、後輩に負けないと成長し続ける。
忘れもしない。20年の6月の小田原S級戦の準決勝。真杉は神山拓弥を後ろに付けて主導権を奪えず、何もできないまま終わった。レース後、検車場で神山が真杉を指導する姿があった。そして神山は記者たちに近づき「3年。3年で化けると思う。俺は選手を見る目はあるから」と教えてくれた。神山は見る目はないかも知れない。あれから1年半。3年はいらなそうだ。
まだ記念も優勝していない。ただ、真杉が記念の7桁の賞金ボード。いや、ビッグの8桁の賞金ボードを掲げているまで、想像できる。さらに近い未来9桁まであってもおかしくない予感までする。もうシンデレラではない。2022年、ガラスの靴を脱ぎ捨て、一気にスターダムに上り詰めてみせる。
◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の26歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。愛犬の名前は「ジャン」。1月からは中央競馬との二刀流に挑戦。大谷ばり、MVP級の活躍を目指したい。