「第77回日本選手権競輪」が５月２日に開幕。〝競輪ダービー〟は特別競輪最高峰にランクされる。

　ダービーの魅力は出場選手がＧⅠ最多の162人。出場選手の選考期間は１年間に及ぶ。優勝賞金はＧⅠの中で最高額。そして勝ち上がりの厳しさにある。

　私が競輪記者になり最初に見たダービーは88年3月の立川（優勝は滝澤正光）。優勝賞金は1950万円。88年のグランプリの優勝賞金が1700万円だったことから当時のダービーの重みが分かる。

　162人の出場選手が大会を盛り上げる。以前は（～95年）選考期間内の上位216人によりダービートライアルが行われ、２回戦の上位162人が本大会の出場権利を得た。現在は選考期間内の賞金上位者だが出場選手数は変わらない。

　出場選手が多いことは勝ち上がりの厳しさにつながるから面白い。ダービーの一番の見どころは二次予選７個レース。二次予選の勝ち上がりは１～２着と３着４人が準決勝。二次予選で3着に入っても初戦のレース格、着順で３人は脱落する。二次予選3着で確実に準決勝に進めるのは初戦が特選シードで4着の選手のみ。勝ち上がりの厳しさは迫力を増す。ファンの車券推理が〝何が何でもまず３着まで〟の選手心理とマッチする。出場選手数が少ないＧⅠの６日制だと４、５着でも勝ち上がれる概定になってしまう。一次予選からスタートする選手には失敗は許されないのだ。

　88年から見たダービーに思い出は尽きない。デビュー史上最速でダービーを優勝した吉岡稔真（福岡＝引退）の92年。小橋正義（当時岡山＝引退）が連覇した94、95年。神山雄一郎がグランドスラムを達成した99年。ダービーを「日本選手権」と口にして日本選手権４度の優勝を飾った村上義弘（京都＝引退）。今回の優勝賞金は8600万円（副賞含む）。ダービー王に輝くのは誰か…。

　◇中林　陵治（なかばやし・りょうじ）1962年（昭37）生まれ、熊本県出身の60歳。慶大卒。87年７月入社、同５月から競輪記者。以来、現場取材一筋36年。デビュー戦（59期以降）から見た選手の中で最強は神山雄一郎、最速は吉岡稔真。