6月中旬から下旬、GⅠ高松宮記念杯と青森ミッドナイトを転戦取材した。GⅠは最高峰の舞台。言わずもがな素晴らしい競輪ばかり。チャレンジ7R制だった青森ミッドナイトも熱かった。期末ならではの代謝回避を懸けた戦いと、引退レース。スピードはGⅠが上だったが、競輪の醍醐味(だいごみ)とも言える〝人間味〟は青森ミッドの方が感じられた。
浦野慈生(40=神奈川・103期)はまさに代謝のボーダー上にいた。そんな浦野を盛り上げようと、予選は藤田和彦、準決では井手尚治が点数下の同県の後輩を番手に回した。藤田は「ダービーの決勝よりも緊張する」と92年の大一番と比較した。決して勝つことを放棄したわけではないが、ベテラン2人が盛り立てたおかげで浦野は決勝入り。代謝を免れた。「本当にラインのおかげ」と仲間に最敬礼。熱い走りだった。人間が走るからこその競輪が詰まっていた。
特別競輪でも活躍していた渡辺秀明(54=神奈川・68期)は代謝が確定的でラストランとして青森入り(結果的には30日に伊東ミッドナイトの補充を走ったが)。前検日にぽろっと「本当に辞めたくない」とこぼした。「みんななりたくて選手になっているから」と続けた。初日の後には「泣いてきたのにな…」と言いながら、涙をこらえ切れなかった。35年分の思いが詰まっている美しいもの。競輪選手がいかに素晴らしい職業かを感じさせた。
競輪はファンが車券を買うことで全てが動いている。当たった外れたも大事。ただ、その中でも競輪にしかない人間味が出るから面白い。競輪はギャンブルの終着地点とも言われる。それは展開や数字を超えた、人間味を探る読み合いだから。それがよく理解できたシリーズだった。
◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の31歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部競輪担当。22年は中央競馬との二刀流に挑戦。23年から再び競輪一本に。愛犬の名前は「ジャン」。高松宮記念杯はダービーに続き、古性優作に逆らって車券撃沈。


