別府競輪GⅡ「ウィナーズカップ」競輪記者注目選手リレーコラム
2年ぶりのウィナーズカップ出走となる嘉永泰斗(24=熊本)に注目したい。直前の大宮FⅠは完全V。先月のGⅠ全日本選抜競輪(高知)から投入した新車が引き続き好感触のようだ。高知では「重心が低くなって車が流れるし、最後までしっかりと踏める。最近では一番いい」と手応えを得ていた。全日本選抜は準決勝進出を逃したが、今回はさらなる大暴れの予感が漂う。
嘉永を語る上で欠かせないのが21年の熊本記念in久留米だ。決勝は、13歳年上で、実績も圧倒的に格上の北津留翼が九州ライン3車の先頭を買って出て、平原康多や松浦悠士らを相手に突っ張り先行で主導権を奪取。北津留の走り、気持ちに嘉永が番手捲りで応えて地元記念で初のGⅢ制覇を果たした。その時に「優勝できたのは北津留先輩のおかげ。もっと力をつけて九州の先輩たちを引っ張って恩返しをしたい」と誓っていた。この時はまだGⅠ出場も経験していなかったが、地元記念Vをきっかけに急成長。昨年は5度のGⅠに出場して3度準決勝まで勝ち上がった。たくましさを増している。
嘉永泰斗ファンの方に怒られてしまうかもしれないが、彼の魅力は顔と強さだけではない。競輪選手としての走り、競輪ファイターとしての戦い方が、最大の魅力だと思っている。ラインの重要度の熟知に加え、レースセンスが抜群。とても24歳の走りとは思えない、近年の九州の選手にはいなかった、ひと昔前の自力選手の走りを思い出させてくれる(最近は伊藤颯馬もそんな雰囲気)。よほど北津留の背中で学んだことが大きかったのだろう。レースでは仕掛けるべき場所で必ずアクションを起こすし、潔く行く時は行く男気も持っている。負けたレースでも後方で何もできないという凡走がほとんどなく、内容ある走りを続けている。その走りは9車でより輝く。他の競技やスポーツにはない競輪の魅力を体現している一人である。
ウィナーズカップは21年3月の松阪大会でビッグレースデビューを果たした大会。大苦戦したあの時とは心技体全てで別人になっている。最終日の2日後の23日は25歳の誕生日。24歳の締めくくりのシリーズだ。第6回にして初めての九州開催。今回は特選シードに選出された。九州の、復興へ突き進んでいる熊本の、未来を支える男の激アツな走りに酔いしれよう!(本間 正則)
◇嘉永 泰斗(かなが・たいと)1998年(平10)3月23日生まれ、熊本県出身の24歳。113期生として18年7月に武雄でデビュー。通算成績は311戦141勝。Vは21年のGⅢ熊本記念in久留米を含む21回。1㍍75、80㌔、血液型O。
◇本間 正則(ほんま・まさのり)1983年(昭58)1月28日生まれの40歳。福岡県生まれ静岡県育ち。某競輪専門紙記者、某スポーツ紙記者を経て、18年4月に中途採用でスポニチ入社。東京の渡辺記者とは学年が○個違うが同期の間柄。