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【記者コラム】古き良き競輪思い出させた慎太郎の職人芸

 10日決勝の平塚記念は佐藤慎太郎(45=福島)の優勝で幕を閉じた。逃げた平原の番手戦で地元勢をブロックした決勝戦も見応えがあったが、二次予選の〝慎太郎の職人芸〟はオールドファンに古き良き競輪を思い出させてくれた。

 8日の9R二次予選。慎太郎の目標は徹底先行型の桜井祐太郎(22=宮城)。しかし別線に上昇一途の犬伏湧也(26=徳島)がいる。2車単の人気は犬伏が慎太郎を上回った。レースは慎太郎に任された桜井が先行。犬伏の巻き返しを警戒した慎太郎は犬伏の好スピードの捲りを一発で仕留めて止めた。そしてラインの3人で上位独占。番手が慎太郎でなければ違うレースになっていた。

 この職人芸がオールドファンは好きだ。もちろん競輪の華は先行選手。昭和の滝沢正光から平成の神山雄一郎、吉岡稔真へ。一方、追い込み選手は脇役に見えるが玄人ファンに受ける。昭和の井上茂徳からのめり込んだファン(私も)は数え切れない。

 ルール改正、レース形態の変化、また7車立て主流になったことで追い込み選手が仕事人ぶりを発揮する機会は明らかに減った。

 今は〝○○を使う〟という競輪用語も見なくなった。これは追い込み選手が先行選手を使う。すなわち先行選手が先手さえ取れば(番手選手が)別線は止めるし、粘れるように残す。という追い込み選手目線の言葉。この技量があるのはS級上位の一握りしかいない。平塚の慎太郎は〝格好いいマーク屋〟を思い出させた。

 14日から川崎記念が開幕。川崎の桜花賞は記念の中でも格上。03年4月5~8日の記念開催で139億9474万円の売り上げ記録を持つ。慎太郎ばりの職人芸には声援を送り、〝(最近よく見る)車間を空けながら抜き損じた〟選手には厳しいヤジを飛ばす。ファンの声援、罵声が選手を育てるのも事実だ。

 ◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)7月13日生まれ、熊本県出身の59歳。慶大卒。87年4月入社、翌5月に小橋正義(引退)ら59期生デビュー戦(花月園新人リーグ)で記者デビュー。以来、競輪の現場取材一筋35年。9車の勝負レースは5車の結束、番手捲り、競り。

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