競輪において後方から前団を制して先頭に立ち、徐々にペースを上げていく〝抑え先行〟が昔から使われている一般的な戦法と言える。しかし、近代競輪ではスピードを求められ、助走を付け一気に加速して前団を叩く〝カマシ〟のスタイルが樹立されている。そんな中で嵯峨昇喜郎(20=青森・113期)=写真=は自分の戦法を確立している。「自分のスタイルはカマシ、まくり。周りからいろいろ言われることはあるけど、自分はこれでやっていく」とキッパリ。抑え先行は比較的踏み出しが緩いぶん番手や3番手の選手は付けやすい。しかし、カマシに関しては踏み出しから一気にスピードが上がるぶん、番手の選手が離れることも多い。ある意味マーカー泣かせの戦法ではあるが、カマシを自分の中で確立させて一本で食べていくのも容易なことでないのは事実だ。
しかし、嵯峨はそれをやってのけている。先日の四日市記念では初日、二次予選、準決といずれも鋭くカマして3度目の挑戦で記念初優出を決めた。中でも四日市の準決では競輪界の至宝・平原康多を封じ、一線級が相手でもパワーが通用することは証明された。「カマシ、まくりのスタイルでも記念の決勝に乗れるというところをみせることができた」。結果を出して自信に満ちあふれている。北日本の名参謀・佐藤慎太郎に「戦法の幅が広がればGⅠは獲れる」と言わせるほどで、未来の北日本を背負って立つ逸材に間違いない。荒削りな面はあるが、伸び盛りで走るたびに経験値を重ね成長を続けている。記念初優出は通過点にすぎない。今後、特別競輪の舞台で〝カマシまくり〟のスタイルがどこまで通用するか、楽しみな逸材だ。(栗林幸太郎)
【記者コラム】嵯峨”カマシ、まくり”で突っ走る
2019/11/13