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【記者コラム】滝澤氏の全盛期思わせる脇本の強さ

 青森記念が開幕。優勝争いとともに注目を集めるのが27連勝中の中野慎詞(23=岩手)の走りだ。初日11Rで初の9車に挑む。9車と7車。2車の差でレースはガラリと変わる。

 ただし「ファンの前で走り、車券を発売しているレースで1着を取る」ということの価値は変わらない。時代ごとにデビュー時の斡旋、ルールなどが違っても車券を発売している以上、◎選手には大きなプレッシャーがかかる。その中で人気に応えて1着を重ねるのがファンに対してのプロの責任。27連勝中の中野には今までのスター同様、いや、それ以上の雰囲気を感じる。連勝記録を1つでも伸ばしてほしい。

 連勝記録といえば脇本雄太のS級20連勝だ。吉岡稔真氏(スポニチ評論家)の18連勝を抜いて現在も更新中。記者は94年3月の伊東記念で吉岡氏のこの記録を取材した。当時のS級連勝記録は滝澤正光氏の16。吉岡は伊東記念準決勝で17を記録すると翌日の決勝で18へと伸ばした。「吉岡17連勝」の新記録達成翌日、スポニチは裏面で取り上げた。当時、競輪の記事が裏面に掲載されるのは珍しいことだった。

 脇本の今の強さは滝澤氏の全盛時代を思わせる。87年(昭62)の滝澤氏は強かった、どころでなかった。記録の筆頭は13場所連続優勝。もちろん記念、特別競輪(宇都宮オールスター完全V)を含む記録だ。1年間の成績は80戦64勝、勝率は驚異の80%。今年のいわき平ダービー、西武園オールスター決勝は脇本の強さだけが記憶に残った。脇本の連勝記録も楽しみだ。

 さて、今日の青森記念第9R。◎が高橋晋也でなく武田豊樹にした理由。武田と高橋は高校(釧路緑ケ岡=当時、現武修館)の先輩、後輩。武田にとって高橋は「スケート部(直系)の後輩」。また高橋は「武田さんは憧れでした。武田さんがいたから僕は競輪選手になった。初めて(後ろに)ついてくれるのでうれしいです」。となれば高橋が武田を気遣っての先行勝負とみた。こんな推理もまた競輪の魅力の1つだ。

 ◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)生まれ、熊本県出身の60歳。慶大卒。87年4月入社、同5月に競輪記者デビュー。以来、現場取材一筋36年目。9車の勝負レースは5車の結束、番手捲り、競り。

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