19年度上半期(4~9月)の開催日程が2月に発表された。モーニングからミッドナイトまで長い時間、車券が買える。もちろん競輪の目的は売り上げ第一。
この状況下で先日、ある施行者との話の中で「〝収益のために本意ではありませんが〟ミッドナイト開催」という前置きを聞いて私は少しホッとした。本来のプロスポーツはファンが観戦するのが基本中の基本。ギャンブルスポーツであればファンの声援、罵声も選手を育てる。選手も観客がいるからこその走りもある。無観客のミッドナイト開催は〝収益のため〟の前置きを忘れてはいけない。
「平成を振り返る」は平成10年の1998年。3月西武園ダービーは吉岡稔真(福岡=引退)が岡崎孝士(熊本=引退)の逃げに乗り優勝。グランドスラムを狙う神山雄一郎(栃木・61期)はゴール前で迫ったが2着。6月高松宮杯は金子真也(群馬・69期)―後閑信一(当時群馬=引退)の3番手から高木隆弘(神奈川・64期)が直線伸びて2度目の特別V。腰痛から立ち直った高木の差し脚は5月頃から際立っていた。
8月青森全日本選抜は97年グランプリ覇者の山田裕仁(岐阜=引退)が特別初タイトル。9月一宮オールスターは神山と吉岡の東西横綱対決が注目を集めたが4人で連係した中部勢の中から山口幸二(岐阜=引退)が追い込んで特別初V。10月前橋親王牌は小橋正義(当時岡山―引退)が優勝。11月小倉競輪祭はドーム初開催。逃げた吉岡が自らブロックして1着失格、加倉正義(福岡・68期)が繰り上がり優勝。12月立川グランプリは山口幸二が優勝。
特筆すべきは神山が95~98年のグランプリで4年連続2着。そして特別競輪を1度も優勝できなかった神山が賞金王となり、平成10年の最優秀選手に輝いた。神山が抜群の強さと安定感を見せつけた一年だった。
♤中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)7月13日生まれ、熊本県出身の56歳。慶大卒。87年4月入社、翌5月に小橋正義(引退)ら59期生のデビュー戦(花月園新人リーグ)で記者デビュー。以来、競輪の現場取材一筋32年。平成10年一番の思い出レースは6月・高松宮杯(当時は大津びわこ開催)。