青森で127期のルーキー利川寛太に会った。2場所前の地元防府(9月16日決勝)で、デビュー初優勝を完全Vで飾ったのだが、その決勝で下した相手が同期で卒業記念チャンピオンの三神遼矢(2着)だった。自転車競技のナショナルチームにも所属するスター候補を相手に挙げた金星。しかも三神は特別昇班にリーチが懸かっていた一戦だった。
3分戦の一戦はライン3車の利川が中団、三神は後方に置かれる展開。ラインのアシストもあって、先に仕掛けた利川が、三神の捲りを封じて押し切った。「初の地元開催で気合が入っていました。しかも決勝は地元の先輩2人がついて、3番手は師匠の井山和裕さんが固めてくれたんです。話し合って作戦を立てたら見事にハマった。普段から33バンクの防府で練習しているから、前々にいないといけないのも分かっていたので」と振り返った。
下関国際高時代はウエイトリフティング部に所属。国体、高校総体で優勝した実績がある。卒業後は地元のタイヤメーカーに就職。5年間勤務したが合わず、スポーツで生計を立てる道を選んだ。当初は自転車競技に慣れず苦労したそうだが、学生時代に鍛え上げた運動能力の高さは本物で、養成所の適性試験に一発合格した。防府での初優勝の2日後には長男が誕生。公私ともに充実している。
青森では2、2着で決勝進出。決勝は捲られて4着に敗れたものの主導権を奪って見せ場をつくった。「自分についてくれる以上はラインで決めることが大事だと思っています」。苦労人の今後の活躍に注目したい。
◇利川 寛太(としかわ・かんた)1999年4月19日生まれ、山口県出身の26歳。25年5月、127期生として防府でデビュー。師匠は井山和裕。1㍍83、93㌔。背筋力は280㌔。血液型AB。
◇鈴木 智憲(すずき・とものり)1967年生まれ、愛知県出身の57歳。92年スポニチ入社。97年から2年間競輪記者を経験。当時は神山雄一郎、吉岡稔真が東西の横綱として君臨していた。24年4月に26年ぶりに現場復帰。