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【記者コラム】谷口遼平 同期の死を乗り越え覚醒

 4月初頭、競輪界に衝撃が走った。野原雅也さん急逝――。第一報が紙面上で報じられたのは、故人が走る予定だった四日市競輪「大阪・関西万博協賛GⅢ」2日目の朝だった。谷口遼平(29=三重、写真)は四日市GⅢ開催時に訃報に接し、深い悲しみに打ちひしがれた1人だ。野原氏とは同期同学年で気心知れた間柄だったのだから無理もない。まともな精神状態ではない中で何とか4日間を走り切り翌日、同期の元へ向かった。
 その直後の福井FⅠは欠場。約1カ月の沈黙を経てGⅠ日本選手権(平塚)の舞台へ。一次予選、吉田有希との壮絶なモガキ合いを制して逃げ切り勝ち。レース後の勝利者インタビューには、1カ月前とはまるで別人のような前向き思考な谷口がいた。
 「雅也の死は同期として非常に辛かったけど、自分以上に辛いはずの妻の美咲さんが、き然とした姿で迎えてくれた。今後は競輪に携える仕事を始めたいって話も聞きました。凄いな~って。悲しんでる場合じゃないなって。これからは雅也の分まで、自分たちが頑張らないといけない」
 野原美咲さんは18日、自身のツイッターで京都向日町競輪のネット配信番組に出演することを報告。母は強し、である。そして谷口もダービー3走目でGⅠ初となる節間2勝目をマーク。最終日は番手戦で持ち味を封印したが、最後まで諦めない粘り強い走りで、これまでの淡泊なダッシュマンイメージを一新した。
 「これからは強地脚の谷口と呼んでください」。もちろん練習の裏付けがあってこそ。その太ももの筋肉は、谷口史上最高の張りと太さになっている。なにより精神面が強くなった。すべては同期の意志を継ぐため…。その断固たる決意がそうさせたのであろう。次走は29日からの伊東FⅠ。そしてGⅠ高松宮記念杯を走る。同期の死を乗り越え、覚醒した谷口遼平の走りに注目していただきたい。

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