真のエースになれる――。「あぁー、マジ悔しい」。12月30日、GPを走り終えた真杉匠(24=栃木・113期)は叫んだ。初出場でも、雰囲気にのまれることなく単騎で3着。ただ、本人は「清水(裕友)さんが降りてこなければ、もっといい勝負ができた。最後は伸びた?全然です」。〝優勝できる〟という自分への期待が大きかったからこそ、関東の新エースは悔しさを爆発させた。
周りの期待も大きい。当日、立川競輪場には真杉の応援に栃木の選手が来ていた。大一番の後、彼らは〝真杉、良くやった〟という顔をしていなかった。それよりも〝真杉ならもっとやれた〟。という期待感だけが漂った。レジェンドもそうだった。真杉がオールスターを獲った時、神山雄一郎は「おまけと思ってほしい。もっと上を目指してほしい」とエールを送った。自分も仲間も、大きな期待をしている。
期待に応えるのがエースだ。10日に真杉のオールスター&競輪祭の優勝祝勝会が行われた。なんと主役は腕を吊り、足を引きずって登場。前日の練習中落車で「左鎖骨の骨折、右足指の骨折です」(真杉)。支部長の山口貴弘は「救急車で搬送されて、正直参りました…」と頭を悩ませたという。それでも真杉は来場者と明るく写真撮影やサインに応じた。レースではないが、関係者の期待に応え、強い自覚と責任を感じた。
祝勝会のあいさつで「昨年は先輩や仲間のおかげで勝つことができた。今年はその恩を返せるように、関東を引っ張っていけるように頑張りたい」と宣言。今年は自分だけではない。関東再建へ、真杉に掛かる期待はとてつもなく大きい。それでも、真のエースとして応えてくれるはずだ。祝勝会で魅せた責任感を、今度は走りで。24年、関東のエースに期待したい。
◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の28歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。昨年は中央競馬との二刀流に挑戦。今年から再び競輪1本に。愛犬の名前は「ジャン」。