第72回高松宮記念杯は宿口陽一のGⅠ初決勝V。松浦悠士―清水裕友のゴールデンコンビが敗れる波乱の幕切れとなった。吉田拓矢の追い込みを上がり10秒9でとらえる堂々の勝利。自力でも戦うタテの威力を存分に発揮した。直前に平原康多の欠場があり、関東勢は苦戦が予想されたが、このVで続くビッグレース戦線で関東勢が勢いづくのは間違いない。
今大会で残念だったのは初のGⅠ出場で活躍が期待された山口拳矢を筆頭とする若手選手が新風を巻き起こせなかったことだ。山口と同期の寺崎浩平も消極的な走りに終わった。準決勝で打鐘前から強烈な先行を見せ、4着に終わったが存在感をアピールした深谷とは対照的だ。次のオールスターには町田太我、石原颯の同期がGⅠ初出場を果たす。117期勢の旋風に期待する。
決勝進出こそならなかったが、積極的な走りで注目を集めたのが、Vの宿口と同じ埼玉の黒沢征治(29=埼玉・113期、写真)だ。5月完全V2回、準V1回の勢いのままに予選を1着で突破して青龍賞に進出。新山響平との壮絶な先行争いには敗れたが、準決勝では同じく新山を相手に主導権を取り切った。この走りで宿口が1着で決勝に。陰のVの立役者といっていい活躍だった。
「自分はスピードタイプでないので、長い距離を踏むことを意識しています。まだまだ課題はありますが、GⅠの舞台でも戦える手応えをつかめたことは大きいです」
全力でモガく姿は、滝沢正光ら昭和の時代の先行選手を思わせる力強さがある。パワー全開で勢いのついた関東ラインを引っ張っていく。(緒方泰士)
【記者コラム】黒沢 勢いついた関東勢引っ張る
2021/6/23