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【記者コラム】S級戦はやっぱり9車が面白い

 今年初のGⅠ「全日本選抜」は郡司浩平(33=神奈川)の優勝で幕を閉じた。売り上げも好調で1月・平記念、2月・静岡記念のGⅢに続き目標額を上回った。

 「売り上げ」の話は車券ファンにはあまり興味がない。〝自分が当たったか、外れたか〟が一番。私も記者でなければ売り上げの話はしない。しかし「競輪は9車が面白い」と思うファンにはグレードレースの売り上げは今、大事な要因になる。理由は9車立て(現在はGⅢ以上がメイン)の売り上げが伸びないと〝9車立てに戻そう〟という風が吹かないからだ。私も多くの車券ファンから「9車にいつ戻るの?」と聞かれる。

 7車立てが主流になったのは20年の新型コロナ対策から。選手宿舎、選手控え室の問題など当時の対応として参加選手数を少なくした。FⅠ戦12レース制の参加選手は108人から84人へ。その中でも「(漢字の)競輪は9車」と思う私をはじめオールドファンやS級選手は〝新型コロナ対策が終わればS級は9車に戻る〟と疑ってなかった。

 23年5月に新型コロナ対応が変わったが3年半の月日は長かった。この間の売り上げは堅調。そして20年4月以降に競輪事業に異動してきた施行者の多くがFⅠ戦の9車立てを見ていない、という状況になった。7車立てで堅調なら経費を増やしてまで9車立てに戻すか?の話になるのも事実。

 私が知る施行者の中でも伊東市をはじめ競輪事業と本来の競輪に明るい施行者もいる。本場に足しげく通うファンの声を聞いてほしい。

 全日本選抜の準決勝で山田英明、浅井康太が後方から突っ込んだレースはトップが走る9車立てならではの迫力があった。ゴール前の1車身の中に7~8人が横一線で写真判定になるのもトップの9車立てだけ。グランプリを頂点とするレース体系は「S級は9車」が望ましい。

 ◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)生まれ、熊本県出身の61歳。慶大卒。87年4月入社、同5月の花月園新人リーグ(59期生)で競輪記者デビュー。怪物・滝澤正光の先行、鬼脚・井上茂徳の追込みに即、魅了された。以来、現場取材一筋37年。

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