最高の祭典だった。名古屋競輪場で行われた日本選手権競輪。売り上げ165億円越えは前年比約108%、目標150億円を大きくクリアした。その売り上げ以上に圧巻だったのが、場内の盛り上がり。6日間で4万3800人、最終日は1万4282人が来場。バンクを取り囲むファンからの声援、怒号、拍手。これが開催を盛り上げた。
明らかに若いファンが増えた。スマホを片手に車券談議をしている若者グループ。彼氏が彼女にラインとは何かを教えるカップル。子供を抱っこしながら楽しむファミリーも来場していた。ネットを中心とした広告や、ミッドナイト競輪がファンを増やした。そのファンが画面の競輪だけでなく時間的、経済的コストを払って生の競輪を見にきた。〝これから〟をつくるファンが増えたことは競輪の未来が開けたと言っていい。
ファンの声援に選手のパフォーマンスも呼応する。決勝と同じくらい盛り上がったのが最終日の4R。骨盤骨折から復帰2場所目だった佐藤慎太郎が先頭でゴールを通過すると、場内からは大歓声。〝シンタロウ~!〟のコールに本人も何度もガッツポーズをして応えた。佐藤は言う。「お客さんの凄い声援でグッときた。また頑張らなくてはと。今日の1着でもう一回やろう!という気持ちになった」。ファンの声援が選手を後押しし、競輪のレベルアップにつながる。それがまた競輪を好きにさせる。
競輪は間違いなく人気だ。昨年度のレース単価はボートレースを超えた。ネットの売り上げが多くを占めているが、さまざまなコストを払ってでもリアルの競輪を見たいほどファンになっている。今回のダービーを見れば近年の売り上げ増が瞬間的ではないことを確信した。競輪、最高!
◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の29歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。22年は中央競馬との二刀流に挑戦。23年から再び競輪一本に。同い年の吉田拓矢がダービーVで9400万円ゲット。それに引き換え、こちらの車券は…。そこは反比例してしまった。