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【記者コラム】23歳桑名 経験備われば「自在」に羽ばたける


 
 「なんでそこで仕掛けないの」。車券を買ったことのある人なら誰もが思ったことがあるだろう。そんな〝ファンの理想〟と〝選手の現実〟の狭間にいるのが桑名僚也(23・埼玉=写真)。119期の卒期チャンプだ。
 
 「車券も買っていたし、グランプリは見に行っていた」と根っからの競輪ファンの桑名。金網の外にいた青年が、5月から金網の内側でサドルにまたがっている。コメントは毎回「自在」。「今の脚力で逃げる自信がないというのもあるが、自在の中に自力もあると思っている。何でもできるようになりたい」と力強く語る。
 
 ただ、理想と現実の乖離(かいり)がある。優勝はしているが、119期の頂点に立った男として期待に応えているかと言われれば、うなずきづらい。
 
 3~5日に開催された静岡FⅡ。新人は1人で楽々優勝かと思われたが、初日からつまずいた。最終1Cまでペースを緩ませ別線に叩かれる。さらには番手で粘り、内に詰まって3着。準決は捲りで快勝したが、単騎となった決勝は楽にラインの切れ目の5番手を確保するも、前との車間を空け過ぎて捲り不発の3着。もし、桑名が金網の外にいたら「なんでそこで仕掛けないの」とぼやくだろう。
 
 「外から見ていたら分かるんですが…」。悔しさをにじませながら口にした言葉が今の桑名を表している。理想はある。だが、それを実現する選手としての経験が足りていないのだ。
 
 まだ、デビューして5カ月。ポテンシャル、勝負強さはもちろん、敗因を探り続けるストイックさ、考える力もある。そして選手としての理想もある。脚力のベースアップに加え、ラストピースの〝経験〟を積めば、コメント通りの自由自在な走りができるはずだ。めげずに頑張ってほしい。金網の内にいる桑名が〝金網の外の桑名〟を黙らせる日が楽しみだ。
 
 ◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の26歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。愛犬の名前は「ジャン」。レース後「6はないよ…」と頻繁にヒモ抜けをぼやく。

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