今年一発目のGⅠ・全日本選抜は中川誠一郎の優勝で幕を閉じた。有力選手たちが次々と姿を消していく中で順当に勝ち上がり、決勝では単騎カマシで遠征陣を完封。地元地区の意地を見せつけた。
課題を残したのはS級S班の面々たち。とくに準決勝、浅井康太の失格は前方不注意による完全な過失。本人も「プロとしてあるまじき行為。ただただ自分が悪い」と猛反省。「カマした2車で決められた」という思い込みがあったにせよ、ゴール前で死に体の山中秀将に追突。ファンの車券を一瞬にして紙くずに変えてしまったことは事実。こればかりはどうにも擁護できないし、何を言われても仕方がないと思った。
驚いたのはその夜のこと。自身のSNSに謝罪文を掲載。1千件近く寄せられたファンからのお叱りメールやリツイートに一つ一つ丁寧に対応したのだ。自分の立場を理解し、競輪界のことを思う気持ちがないとできない行動である。平安時代、三筆と呼ばれた弘法大師・空海でも筆をあやまるし、猿だって木から落ちる。失敗は誰にだってある。大事なのはそのあとだ。
「いま自分にできることを全力でやる」
事故から数日後、浅井が固めた決意である。いままでもいろんなことがあり、その都度苦悩する浅井の姿を見てきたが、今回の立て直しは非常に早くて素晴らしいものだった。人として大きく成長した証だろう。
表舞台には立ちづらい時期だ。それでも肋(ろっ)軟骨骨折など満身創痍(まんしんそうい)の体で各方面の表彰式に参加。さらには昨日、西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県の真備地区へ車いす10台の寄贈に出向いた。これも「いま自分にできること」の一つである。
過去を忘れて…とは言わない。色めがねなしで今後の浅井を見て欲しいのだ。きっと、あの失敗をかき消すほどのレースや生き様を見せてくれるはずだ。(岡田 光広)
【記者コラム】失敗は誰にもある…今後の浅井康太に大注目
2019/2/20