10~12日の前橋FⅡ。昨年デビューの113期・前川大輔(28=福島、写真)が初めて決勝に進出した。鬼門の準決勝は赤板前から突っ張り先行し押し切る強い勝ちっぷりだった。「道中焦って脚がなくなってしまうことが多かったけど、落ち着いて走れるようになった」。決勝は5着だったが、これまでの苦い経験をバネに成長した姿を見せた。
元陸上自衛官の経歴を持つ28歳。しかも数ある部隊の中で最強と呼ばれる第1空挺(くうてい)団所属だった。パラシュート降下などの空挺作戦を行う精鋭部隊。「高度300㍍、東京タワーと同じくらいの高さから降下していました」。得難い経験を武器に今度はスターへの階段を上って上って上りまくってほしい。
ルーキー世代でも出世の早い選手は特別昇進に特別昇進を重ねS級で活躍中。一方でいまだにチャレンジレースから抜け出せずにいる選手たちは決して成功しているとは言い難い。それでも誰一人として現状に甘んじ、指をくわえて見ている者はいない。
前橋の決勝には徳島の113期の田村裕也(23)も名前を連ねた。今をときめく太田竜馬と同門で、デビューは太田より遅いが「実は太田の兄弟子(師匠山本宏明)です(笑い)。練習で太田に勝ったこと?勝ったらここ(チャレンジ)にはいないでしょう」と笑わせた。そんな23歳も気持ちのいい積極策で予選、準決勝と勝ち上がり「2周もがいて残れるようになってきた」と頼もしかった。
この開催で優勝したのは同じくルーキーの中嶋宣成(28=長野)。デビューから113期最速で特進に王手をかけたが、まだここにいる。それでも天性のスプリント力は優秀な同期たちより劣るとは思えない。大器晩成でいいじゃないか。まだ始まったばかりだ。
♤出田 竜祐(いでた・りゅうすけ)1980年(昭55)9月29日生まれ、熊本県出身の38歳。明大卒。05年スポニチ入社。芸能、サッカー、ボートレース担当を経て昨年4月から競輪担当。2年目に突入したが、いまだに選手の顔と名前を覚える〝脳トレ〟の日々。
【記者コラム】“晩成型ルーキー”たちの成長
2019/4/18