ニュース&記者コラム

【我が道 井上茂徳⑲】ラインの絆で全冠制覇達成

 88年(昭63)第39回高松宮杯決勝の展開を思い出しながら書いていきます。スタートは(滝沢)正光が取り、我々西日本5人は周回中5番手から(佐々木)浩三―富原忠夫さん―中野さん―私―(佐々木)昭彦の並び。

 残り2周あたりで浩三が前で構える東日本勢を抑えるように動いた。なぜかというと先頭の正光はタテに踏む馬力はもちろん、ヨコに動くこともできるので、その両方を封じるために、先頭誘導員の後ろに入った。あうんの呼吸というか相手の作戦を読み切った動き。競輪用語で書くと〝イン斬り〟です。

 そこで西日本の先頭を買って出てくれた富さんが浩三の前に行き、誘導員の後ろに入り込んだ。中野さん、私、昭彦が続き、浩三も5番手にドッキング。正光は下げて6番手で打鐘が鳴りました。

 誘導員は地元の35期・井狩吉雄さん。どんどんスピードが上がったけんね。富さんも、その先導を使いつつ、うまかった。体重は100㌔を超す人生の先輩で気は優しくて力持ち。最終2角あたりから迫力満点の先行を打ってくれました。私の後ろを固めてくれた佐々木兄弟、昭彦は正光と気心知れた43期同期ですが、レースとなれば割り切り、失礼のないように細かいヨコの動きでけん制。弟・浩三も正光が仕掛けにくい援護を見せてくれました。東日本は6番手以降のまま、最終4角手前を迎えます。

 富さんの2番手を走る中野さんが前へ踏み込み直線へ。理想の展開です。対する正光は私の後ろ、昭彦の位置まで来ていました。

 びわこの長い直線、オイ(私)は無心でした。自分の力を信じ、中野さんをかわして優勝。ラインの結束力で全冠制覇達成です(※枠単1―3 1220円、滝沢正光4着)。

 久々の特別優勝(86年熊本全日本選抜競輪以来)で、ファンにアピールできて良かった。決勝翌日のスポニチ大阪版で当時演出家だった伊集院静さんに「絆の勝利」と観戦記を書いていただき、その通りの勝利でした。競輪の基本全てを教えていただいた恩田勲さん(熊本26期)から「常に勝って喜ばれる選手になれ」と言われていたので、みんなが笑顔で出迎えてくれて、うれしかったです。

 あれから37年がたち、先行してくれた富さんこと富原忠夫さん(享年60)は14年に天国へ旅立ちましたが、(佐々木)浩三は今も現役、輪界最年長!!63歳です。先日の函館競輪ミッドナイト(9月14~16日、3着→5着→6着)でも一生懸命走ってました。オイの高校(佐賀・龍谷)の後輩、大したものです。

 1958年(昭33)3月20日生まれ、佐賀市出身の67歳。競輪学校41期生として78年5月デビュー。GⅠ通算9勝。KEIRINグランプリは3度優勝(86、88、94年)。代名詞は鬼脚。99年3月31日引退。通算1626戦653勝。優勝回数154回、獲得賞金15億6643万円。現在、スポニチ評論家として活躍している。

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