先月末に行われた、いわき平記念は鷲田佳史(福井=37)の記念&S級のW初優勝で幕を閉じた。日程的には全日本選抜(GⅠ)の出場メンバー、すなわちS級上位が不在。売り出し中の若手、奮起を誓うミドル世代にとってはまたとない記念Vチャンスだった。
翌日、そのチャンスをモノにした鷲田に祝福のメールを送ると「身体のケアでまだ地元に戻ってないんです。それもあって優勝した実感が全く湧いてこないんですよ」と返信が届いた。
そんな鷲田の原動力となったのは、何と言っても弟子である寺崎浩平(27=福井)の存在だろう。
「(寺崎と)一緒に走れるのはGⅠしかない。同じ舞台に立てるように、弟子を追いかける気持ちで頑張っています」
今回の優勝で競輪祭の出場権も獲得。今年は2年ぶりにビッグの舞台で、まな弟子と共に活躍する鷲田の姿を見られそうだ。また昨年末の広島記念では野原雅也(27=福井)が記念初優勝を飾ったばかり。エース脇本雄太(31=福井)も東京オリンピックで金メダルを獲得するための準備を着々と進めている。明るい話題が絶えない福井支部の今後の活躍に注目である。
悲しい出来事もあった。先月24日、成清龍之介(享年21)が千葉県袖ケ浦市の市道で練習中、路肩に停車していたトラックに衝突して死亡。昨年5月にデビューしたばかりの117期生で、チャレンジ戦では22戦10勝、2度の優勝を飾っている。
父親の成清貴之(47=千葉)は23日まで川崎競輪場で行われていた第36回全日本選抜(GⅠ)に出場。同じ南関地区の郡司浩平(30=神奈川)が優勝して大会自体はハッピーエンド。その翌日に起こった悲劇だった。レース中の事故はもちろんだが、競輪選手は練習中でも死と隣り合わせの危険な職業であるということをあらためて痛感する出来事だった。心からご冥福をお祈りいたします。(岡田 光弘)