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【記者コラム】GⅡVから3年…試行錯誤重ね記念獲った中本

 9日決勝の「熊本記念㏌久留米」は中本匠栄(36=熊本)の記念初優勝で幕を閉じた。決勝は「S級9車」らしい車券の面白みがある一戦だった。焦点の1つは4車結束の熊本勢とSS新山響平が率いる北日本3車の先行争い。先行力と実績は明らかに新山が上回るが〝先行意欲〟は熊本勢の先頭を走る松岡辰泰。そして実力者の郡司浩平が単騎戦となった。

 松岡の先手なら❶嘉永泰斗の番手捲りで❽中本の流れ込み。松岡と新山で踏み合うと❷郡司の捲り。その流れなら郡司に続くのは単騎戦❺山田久徳か。穴(高配当)は新山が松岡を強引に叩いたケースで番手❾菅田が恵まれての頭。「9車の競輪ファン」はこの展開推理が好きなのだ。

 レースは熊本勢が前受けから松岡が突っ張り先行、嘉永の番手捲りを中本が差してV。郡司は迫ったが3着まで。中本の後ろを固めた塚本大樹の1車が大きく「競輪はライン」を見せつけた一戦だった。中本も「前と後ろ、ラインのおかげです」とラインの仲間に何度も感謝した。

 中本はデビュー14年目で記念初優勝を飾ったがビッグレース(GⅡ以上)は20年9月の「共同通信社杯競輪」(伊東)を優勝している。20年の賞金取得額は15位に位置した。その後は「もうワンランク上を目指していろいろな事を試してきたが…」結果はなかなか出なかった。今年はFⅠ戦の優勝もなく競走得点も下降気味。試行錯誤を重ねて「また以前に戻し始めて少し良くなってきた」中で迎えたシリーズだった。

 GⅢより先にGⅡ、GⅠを優勝した選手は何人もいるが「記念(GⅢ)を獲りたい」思いはより強い。GⅢの上にGⅡがありGⅠがある。選手の実績はやはり着実なランクアップ。中本はGⅡ優勝から3年間を経てGⅢ、それも地元記念優勝を手に入れた。次の目標は「GⅠの決勝戦に乗ること」。堅実な走りでライン戦に厚みを加える中本は19~22日の寛仁親王牌でGⅠ初決勝を目指す。

 ◇中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)生まれ、熊本県出身の61歳。慶大卒。87年4月入社、同5月の花月園新人リーグ(59期生)で記者デビュー。怪物・滝澤正光の先行、鬼脚・井上茂徳の追込みに即、魅了された。以来、現場取材一筋37年。

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