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【記者コラム】「可能性の拡大」「証明」ラインに2つの意義

 ラインとは。競輪記者5年目で幾度も思うのだからオールドファン、選手は嫌というほど考えてきた永遠のテーマだろう。正直、人の価値観次第。正解も不正解もないと思う。ただ、最近しっくりきたのでコラムとして書き留める。

 その意義は2つ。1つ目は「可能性の拡大」。これは山本伸一(41=奈良)に言われてハッとした。2月5日が初日の宇都宮で、山本は岐阜の志田龍星につく選択をした。近畿以外につくのは初めて。「自力としてのこだわりもあるが、自分の可能性を広げたい」(山本)。結果、山本は志田の番手から優勝した。

 ラインは足し算ではなく掛け算。個人で戦うよりも数倍の力を発揮することが可能になる。もちろん後ろの選手だけが得をするわけではない。自力選手もラインができれば戦法が増え、援護も見込める。お互い、あるいは3人以上でメリットを享受し合って勝つ可能性を増やす。これがラインの基本だと思う。

 もう1つは「証明」である。これはある意味で可能性を軽視し己の人生観、いわゆる〝競輪道〟を貫くもの。直近では高松記念の決勝。東龍之介が菊池岳仁の番手で佐藤慎太郎と競った。勝つ可能性を広げるなら、競るとしてもこの位置ではないと感じた。ただ「自分の中のスジを通した」(東)。俺は〝番手選手〟という証明をした(当然、勝つための競りもある)。

 この証明は本当に難しい。なぜか。誰ひとり同じ〝競輪道〟を持つ選手はいないからである。あるトップ追い込み選手は高松記念決勝について「S班に競るのは疑問だった」と言う。正解、不正解はない。競りもあれば先行へのこだわりなどもある。この証明は車券こそ難しいが、競輪の面白さが詰まっている。

 勝つ可能性か、己の競輪道か。ラインには選手の葛藤と全てを懸けた選択がある。そんなヒューマンドラマが詰まったラインがあるから、競輪は面白い。

 ◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の28歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。昨年は中央競馬との二刀流に挑戦。今年から再び競輪1本に。愛犬の名前は「ジャン」。

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