4月19日から試行実施されているケイリン・アドバンスを伊東で取材したので、記者が感じたアドバンス向きの選手や、選手の反応をお伝えしたい。そもそもケイリン・アドバンスとは国際ルールに則って行われる男子のレースのこと。ラインの概念をなくし全選手が単騎で戦うスタイル。先頭誘導員への差し込み禁止やいわゆるヨコ(押圧、押し上げ、押し合い)の厳格な規制もある。分かりやすく言えばガールズケイリンの男子版だ。
ここまで伊東と青森で行われ、現在は宇都宮と高知で開催中。全てミッドナイトでの開催だ。それだけに内枠から競走得点の高い選手が並んだ。伊東では3日間で18レースのアドバンスが行われ1枠9勝、2枠6勝と顕著な結果が出た。1枠の3着内率は2着4回、3着3回で89%だった。1枠で2度車券圏外だったのはいずれも追い込み選手だった。
通常のミッドナイト開催はSが取りやすくなるため内枠が有利なのだが、アドバンスは理由が異なる。1番枠に入った選手の多くが「好きな位置が取れるので有利」と答えた。国際ルールに則って行われるだけに、先頭誘導員のスピードも通常より速い。それだけに初手の並びで後方に位置すると、そこから巻き返すのは至難の業。かといって前受けから突っ張り先行で押し切るのも難しい。ライン戦ではないだけに、2番手から容赦なく捲りが飛んでくるからだ。
アドバンスで狙うべき選手は内枠に入ったスプリントタイプ。伊東で初代王者に輝いた黒瀬浩太郞、松岡辰泰はいずれも鋭いダッシュ力が武器。ともにアマチュア時代から自転車競技をやっている。2日目にバンクレコードタイ(8秒9)の上がりをマークした黒瀬は「1人だから人に迷惑を掛けることがないので、自分はこっちの方が好き。誘導が速いから、外枠はきついと思います」と語っていた。
◇鈴木 智憲(すずき・とものり)1967年生まれ。愛知県出身の57歳。92年スポニチ入社。97年から2年間競輪記者を経験。当時は神山雄一郎、吉岡稔真が東西の横綱として君臨していた。24年4月に26年ぶりに現場復帰。