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【記者コラム】まだまだ見たいレジェンド神山の1着

 レジェンドが挙げる思い出の1着、そして悔しかった2着とは――。
 競輪界の至宝・神山雄一郎(55=栃木・61期)が3日の函館8Rで通算900勝を達成した。一方で1900回以上も敗北を味わっている。競輪は勝つことだけが全てではないが、勝負の世界は勝者と敗者のどちらかだ。
 897勝目を挙げた昨年11月の大宮FⅠ。節目が近づく神山に「思い出の11着」を聞いた。それは初めて特別競輪を勝った93年の宇都宮オールスター。神山は遠くを見ながら「選手管理の人も泣いてくれたし、たくさんの人が自分に思い入れを持ってくれたんだ」と回想にふけった。それから積み上げたGⅠタイトルは史上最多の16勝。神山伝説の序章があの1着だった。
 では「悔しかったレースは?」。この質問に神山は「グランプリを獲れなかったことだね」と即答した。「グランプリは1着でゴールしていないから。2着はあったけど」。95~98年の4年連続グランプリ2着は競輪ファンの語り草。神様のいたずらなのか、最高の栄誉は最強レーサーの手に届かなかった。「いいレースは何度もしたんだよ。一生懸命に先行でも捲りでも追い込みでも戦った。与えられた役割で頑張った。(太田)真一の後ろで失格した時も頑張ったし、グランプリは優勝したかったが悔いはない。事前の準備もしっかりやったし一生懸命に頑張った」。誇らしげに胸を張る姿が改めて格好良く見えた。
 数々の実績がありながら謙虚で人間味がある。セッティングを煮詰めている時やレース後は自転車少年のようなまなざし。55歳になっても「まだまだ強くなれると信じてるから練習している」と話した言葉がずっしり重く心に刺さった。ファンを笑顔にさせる神山の1着。まだまだ見たい。 

 

 ◇小野 祐一(おの・ゆういち)1983年(昭58)10月26日生まれ、秋田県出身の39歳。06年スポニチ入社。予想では調子、ラインの結束力を重視。初めて競輪をライブ観戦したのは岸和田競輪場。クスッと笑いたくなるヤジの多さに驚いた。

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