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【記者コラム】人の心を読み切るのが競輪の面白さ

 競輪を見て一番気持ちのいい瞬間はいつか。それは選手の個性を捉え、考えを読み、思い通りにレースが進み、そして車券が的中した時だと思っている。それはまるで自分が全知全能の神になり、全てを支配したような気持ち良さがある。

 車券はレースの展開と選手の脚力、そして個性や関係性を分析する。それを自信度とオッズを照合し、金額を決めて落とし込む。とりわけ重要で、考えていて面白いのが選手の〝個性〟である。「実直、ずるい、淡泊、義理堅い…」。具体的にいえば〝義理堅いから世話になった人の前で頑張る〟、〝淡泊だからすぐやめちゃう〟など。脚力、展開だけ考えればいいわけではない。十人十色、2000人超の人の性格や考えを読み切る。これは競輪にしかない面白さだ。

 青森記念決勝、レース動画のチャット欄やSNSが荒れた。真杉が新山に競ったことに対して「地元の邪魔をするな」などの言葉が並んだ。ただ、それは真杉という選手の個性を把握しきれていなかったということ。かなり難しいことではあるが、〝負けず嫌いで何でもできる真杉なら地元でもやっちゃうかも〟と思えるかどうか。今回のキーポイントはまさに真杉の個性を読めるか。難しいところであり、まさしく競輪の面白いところだった。

 次に生かせるのも競輪。最近、動画のチャット欄では「八百長だ」、「コメント詐欺だ」という文言をよく見る。もちろん選手はそんな不正はしていない。車券が外れたショックや興奮、やり切れない思いを何とか堪えて〝この選手はこんな動き、考えをするんだ〟とインプットする。それが次に生きて、冒頭のような気持ち良さを味わえる。

 AIには競輪の面白さは分からないだろう。レース展開だけではない、方程式もない。人の心を読み切る難しさの先に競輪、車券の面白さがあるのだから。

 ◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の29歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。22年は中央競馬との二刀流に挑戦。23年から再び競輪一本に。愛犬の名前は「ジャン」。とはいえ、青森記念は絶望的な車券結果でやり切れなかった…。

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