
治田知也は試行錯誤しながら、S級での戦い方をつかみ始めている。今年2月にA級で3場所連続完全優勝を飾り、S級2班に特別昇級を果たした。S級初戦の松戸2日目に、打鐘先行から逃げ切ってS級初勝利を挙げ、トップレベルでも通用するスピードを披露した。しかし記念初挑戦だった次戦の高知で胃腸炎を患って、約1カ月の休養を余儀なくされてしまう。
「食べられず体重が5㌔も落ちてしまったし、脚力も落ちた。ただS級に上がったばかりで挑戦者の立場だったんで、無理せずしっかり脚をつくってやり直そうと思いました」。その判断は間違っていなかった。復帰初戦となった5月の福井で2日目、最終日といずれも逃げ切って連勝。最終日の勝利は記念すべき通算100勝目のゴールだった。
5月下旬には地元弥彦で行われた「関東カップ」に参戦。「毎回初日の成績が良くないので、今回は調整法を変えて足に刺激を入れてきた。これまではレースに向けて徐々に練習量を少なくして調整していたんですが、足が張った状態で走ってみてどうか試してみたくて」と新たな調整法で地元戦に挑んだ。
その初日は竹内雄作と最終ホームから約半周叩き合う展開となり、直線末脚を失って4着に敗れた。「外並走でも余裕はあった。出切ってからは重くて最後はいっぱい。竹内さんがいいペースだったから勉強になりました」と得る物はあった。2日目は打鐘からの突っ張り先行で逃げ切り。地元でうれしいS級初勝利を挙げた。「ファンの歓声が聞こえました。今は毎日が勉強と思って臨んでいる。印象を与えるレースを心がけています。勝つのも大事だけど、自分のレースをするのも大事だと思っています」と笑った。どこまで成長するか楽しみな越後の大砲だ。
◇治田 知也(はった・ともや)1998年6月10日、新潟県出身の26歳。22年4月、121期生として新潟所属でデビュー。師匠は加瀬加奈子。通算196戦101勝(4日現在)。1㍍76、78㌔。血液型B。
◇鈴木 智憲(すずき・とものり)1967年生まれ。愛知県出身の57歳。92年スポニチ入社。97年から2年間競輪記者を経験。当時は神山雄一郎、吉岡稔真が東西の横綱として君臨していた。24年4月に26年ぶりに現場復帰。