ガールズ選手になったのは父・雅彦さんの存在だった。選手を目指しあきらめた父の代わりに「私が代わって夢をかなえよう」と自転車競技に取り組んだ。今ではレースを誰よりも見て見守ってくれる。初めての賞金で時計をプレゼントした。
今年6月から京都を離れ豊橋で練習に取り組んでいる。
「家からバンクまでは距離があったんです。それでいろいろ出稽古に行って、自分に一番合っていたのが豊橋だったんです」
今はバンクのすぐ近くに住んで練習漬けの毎日だ。
練習環境を変えたのは何より強くなるため。昨年のグランプリトライアルで自信を打ちのめされたのだ。長く自転車競技をしていたことで、初めての大きなレースでも通用する感触はあった。それが「何もできなくて…。過信していました」とショックを受ける。加えて112期同期の梅川風子、鈴木美教、大久保花梨が優勝回数を重ねる。「同期が強くてあせりもありました」と苦しい時だった。それでもトップ選手からのアドバイスが力になり。弱点は何かを見つめ直した。センスで走っていたものを、練習量を増やし自信に替える。競走スタイルも自在の走りから積極的に最終バックを取る走りに変えた。その成果は徐々に出ている。9月防府初日は先行して屈指の先行力を誇る奥井迪の反撃を封じた。
「自分で仕掛けるようになって少し成長を感じています。それでも目標は2年後に置いています。その時には常にビッグレースを走れるように…」
その時まで強くなる努力は欠かさない。
また励みになるのは7月にデビューした姉・聖香の存在だ。「自分のことをかっこいいと思ってくれています。だからへたな走りはできません」とガールズの先輩として気持ちで負けない走りを伝える。
今回のトライアルレースに向けては「去年より良くなっているって感じたい。少しでも上に行ければ」とトップクラスの選手の凄さを体感しているのであくまでもチャレンジャーの立場だ。
レースを離れては「他にすることとか本当にないんです。最近はグルテンフリーをして粉ものが食べられないのがストレスです」とここでも真摯(しんし)にガールズケイリンと向き合っている。2年後の完成型へ向けて、ステップアップしていく走りから目が離せない。
♡坂口 楓華(さかぐち・ふうか)1997年(平9)10月1日生まれの22歳。競輪選手養成所112期生8位で17年1月12日高松でデビュー(15❷)。学生時代から自転車競技で活躍。通算優勝3回。