いよいよ〝その時〟が近づいてきた。熊本競輪は来年6月をめどに、8年ぶりの再開を進めていることが発表された。ということは久留米競輪場で行われる熊本記念は今回がラストに。「走るまでが復興」と言い続け熊本支部をけん引してきた中川誠一郎に、2年ぶりの地元記念や、熊本競輪再開などへの思いを語ってもらった。
――まずは9月の宇都宮FⅠでの優勝おめでとうございます。
「ありがとうございます」
――昨年3月の松山FⅠ以来、1年半ぶりの優勝でした。7月はFⅠの準優勝が2回。状態も戻ってきましたかね。
「だいぶ、なんか裏開催だけど走れるようになってきたかな」
――結果を出せなかったのは…。
「(昨年9月共同通信社杯初日に)落車して戻らなかったけど、やっと。年を取って治りが遅くなった」
――8月にはファン投票で西武園オールスターにも出場しました。
「今年はあれがなかったらGⅠに出られなかった。GⅠを忘れそうなところで出させてもらって、思い出すことができてありがたかった。刺激になった。戻れるなら戻りたいと思っていたし、忘れないで良かったな、という気持ちです」
――そしてビッグニュースが。熊本競輪の再開がどうやら来年の6月になりそうです。
「あと1年もないですからね。これ以上ないモチベーションになるね」
――長かったですか?あっという間でしたか?
16年からですからね。やっぱり長かったかな。熊本競輪場で走ったことがない選手もかなり増えてきたし」
――それにしても熊本支部は若手の台頭が目覚ましいですね。彼らにとっても熊本競輪再開のニュースはこれ以上ない力になりそうです。
「GⅠに行くようになって強くなっているからね。昔の熊本支部って、追い込み選手が多くて、今みたいに自力選手が多いということがなかった」
――自力では中川選手が孤軍奮闘する時代もありました。強い若手が増えてきた今こそ、この流れに乗っていければ…。
「そうですね。なんとかしがみつきたい(笑い)」
――そんな中で迎える熊本記念。以前、地元記念は「グランプリと同等の位置づけ」と話していたと記憶しています。
「呼んでもらえて良かった。先輩から〝(地元記念に)入らなくなったら終わりだよ〟と言われてきた。まだ需要があるうちは頑張りますよ(笑い)。久留米では最後の開催になりそうなので」
――久留米で最初に開催された7年前の66周年、5年前の69周年、4年前の70周年を優勝。今回の73周年が「火の国杯争奪戦in久留米」の最後になりそうです。
「久留米になってから(地元記念を)獲れだした。最後もいい形で終われれば」
――例年は地元記念後があって、その先に競輪祭がある、というスケジュールでした。今年は17大会連続で出場していた競輪祭の出場が途切れてしまいました。
「自分にとってはオールスターとここが後半戦のメイン。終わったら〝あ、ゆっくりしようかな〟という気持ちになると思う。ここが集大成。しっかり間隔も空いたし、準備もできる。悔いなく臨める。しみじみ噛みしめて走らなきゃ」
――今回は地元勢11人で挑みます。それにしても嘉永泰斗選手の活躍は素晴らしいですね。すでに地元記念を優勝している嘉永選手の良さはどのあたりにありますか。
「競輪で強い選手。タイトはもともと気持ちが強いしヨコの動きも苦にしない。それに脚もついてきている。競輪の中心というか、信頼される選手。昔の平原(康多)とか、今の古性(優作)みたいな。見ていて安心感がある。自分とは違って」
――中川選手とは違うタイプだなというのは分かります。
「俺はあえてヨコをやらないことでタテ脚を特化してきた。自分はその方が生きると思ってやってきたので」
――嘉永選手が熊本の新エース。とはいっても、大エースの中川選手に懸かる期待は大きいはずです。
「以前に比べたら前に前にみたいなのは低いかも。引かなきゃいけないところもあると思うけど、半分くらいはそういうところも残っている。エースはタイト。俺はみんなが力を出せるように中心というか、しっかりドンといられたらいいかな」
――精神的支柱のような。
「前は社長としてバリバリやってたけど、今は社長を退いて、会長職でみんなを支えてるみたいな(笑い)。みんなが思い切って戦えるようにしておきたい」
――最後に今大会に懸ける意気込みを教えてください。
「S級S班が5人もいて簡単ではないだろうけど、なんとか地元から優勝を出せれば。今回出場するメンバーの7、8割くらいが決勝に乗る力を持っていると思うので。去年はケガで出られなかったので、その分も楽しみにしている自分もいる。ひとまずは決勝を目指して。決勝で、地元勢でラインを組むのが一番の目標ですね」