中部地区が誇る若きダービー王・山口拳矢のサクセスストーリーは、21年9月のGⅡ共同通信社杯から始まったと言っても過言ではないだろう。舞台は改修前の岐阜バンク。地元ファンと実父・幸二氏が見守るその前で、さらっと大仕事をやってのけた。〝持ってる男〟の異名も、ここが始まりだったことを覚えている。単騎だろうがライン3車だろうが4車だろうが、彼には関係ない。要はいかにツボにはまるか、が重要なのである。

 昨年のダービー(日本選手権)がまさに山口の真骨頂。レースの読み、仕掛けのタイミング、全てがかみ合った一戦だった。ここぞというときのレースセンスは、まさに父親譲り。いや、現代競輪においてはそれ以上の輝きを放つ逸材である。地元開催のGⅠタイトルは、何としてもモノにしたい。ファンの声援を力に変えて、初日からエンジン全開だ。

 そんな山口を技術面と精神面の両方で支えるのが浅井。グランプリ2冠、GⅠ3Vの実績を誇る中部の至宝である。昨年は地元の四日市記念を含めてGⅢ3V。ただ近年のビッグレースでは決勝進出が困難な状況となっている。地区的なパワーバランスの変化が大きな要因だろう。

 現在は他地区の自力選手との連係も視野に入れた柔軟なスタンスを取り入れて流れを変えようとしているが、最終的に目指すところは山口を始めとする中部若手との決勝そろい踏みであることに変わりはない。それが中部王国復活への唯一の道だと分かっているからである。時折みせる厳しい声かけも、それを期待してのこと。〝気づき〟を促し成長に導くことが、先駆者の使命である。そのためなら喜んで嫌われ役を買って出る。それが浅井康太だ。直前落車の影響が気になるところだが、今大会が中部黄金時代再来への序章となることに期待したい。


深谷 南関の結束
真杉 関東の意地
脇本 近畿の信頼
松浦 中四国の絆

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