新田がGⅠ全冠制覇――。GⅠ「第31回寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」の決勝戦が23日、前橋競輪場で行われ、新田祐大(36=福島・90期)が最内から抜け出し優勝。史上4人目のグランドスラム(特別競輪全冠制覇)を達成し、優勝賞金3532万円とKEIRINグランプリ2022(平塚、12月30日)の出場権を手にした。GⅠ制覇(4日制以上)は19年オールスター(名古屋)以来、3年ぶり8回目。
競輪史に名を残すレジェンドたちに肩を並べた。新田が井上茂徳、滝沢正光、神山雄一郎に次ぐ史上4人目のグランドスラムを成し遂げた。GⅠが6大会になった94年10月以降では神山雄一郎に次ぐ2人目の大偉業だ。「第三者的に物事を考えて、客観的な目で見てゾワッと鳥肌が立った」。新田らしい独特の言い回しで大記録の喜びをかみしめた。
歴史的な大一番。絶体絶命のピンチを乗り切った。「内に詰まってしまった。最終バックも凄いことになった」。先行した古性の3番手を確保したのもつかの間、車間を空けてタイミングを計っていると吉田拓が追い上げて5番手。ラスト半周は新田の前に松浦、平原、吉田拓と3車の〝S班の壁〟。外を踏むコースはない。それでも新田はあきらめなかった。「走る前から(小松崎)大地さんが〝勝てるように走れ!〟と言ってくれた。信頼してついてくれたのを感じた」。2センターから最内をスルスルと踏み込み最終コーナーも逃げた古性の内へ。審議ランプがともり長い1着審議。「グランドスラムは簡単じゃない」――。昨年決勝で2着失格の悪夢が頭をよぎったが、競輪の女神は優しくほほ笑んでくれた。
今年5月いわき平ダービー前検日の指定練習中に落車し右肩鎖関節脱臼。今もその後遺症に苦しんでいた中で、たどり着いた金字塔。東京五輪の自転車競技日本代表として短距離界をけん引し、今ではジュニア世代を育成する立場になった新田は「若い子が憧れる競輪選手の1人として結果を求めていきたい」。〝ケイリンと競輪〟を知る36歳は新たな責任感を胸に抱いた。(小野 祐一)
◇新田 祐大(にった・ゆうだい)1986年(昭61)1月25日生まれ、福島県会津若松市出身の36歳。県立白河高卒。05年7月プロデビュー。通算1003戦358勝。通算取得賞金は11億2592万円。主な優勝は第68回日本選手権競輪(15年)、第58、62回オールスター(15、19年)、第67、68回高松宮記念杯(16、17年)、第59回競輪祭(17年)、第33回全日本選抜(18年)、第31回寛仁親王牌(22年)。1㍍72、76㌔。血液型O。
▼松浦悠士(3着)内をどこまで行けるか、になったけど…。古性君が内を空けてしまうとは。
▼稲川翔(4着)優作(古性)のカカリが凄く良かった。気持ちに応えられず残念。
▼古性優作(5着)もうひと粘りが足りなかった。最後は内を来られて腰が引けてしまった。GⅠの決勝であんなレース(内を空ける)をしたらダメですね。
▼平原康多(6着)(吉田が)3番手に入れたけどバックを踏んでから仕掛ける形になったのが…。
▼吉田拓矢(7着)あそこ(3番手)に入れてひと息ついちゃったのが敗因。気持ちの弱さが出た。
▼井上昌己(8着)外を踏もうと思ったときに接触してひるんでしまった。
▼小松崎大地(9着)新田君の動きに集中していたので余裕がなかった。
◆次走予定 優勝した新田祐大は29~11月1日の京王閣記念、2着の守沢太志は11月10~13日の四日市記念、3着の松浦悠士は11月3~6日の防府記念。