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【記者コラム】引退戸辺氏 命の恩人に感謝伝えたい

 昨年8月に引退した戸辺英雄氏(茨城=51期)と話をする機会に恵まれた。
 
 戸辺氏は83年4月にデビュー。A級格付け4場所目の岸和田で「自分のイメージ通りだった」という思い出のレースでS級に特進。ダービーと宮杯で2着、全日本選抜は3着4回と何度も表彰台に上がり、長期間トップクラスで活躍した。その反面、93年(29歳時)には取手記念落車で右側眼窩底骨折。復帰戦の向日町記念落車で左側眼窩底骨折。顔つきが変わるほどの大ケガとの戦いもあった。
 
 戸辺氏の引退理由は「心筋梗塞」。18年4月下旬の街道練習中。筑波山に登った後の昼過ぎに、みらい市で突然倒れて意識を失った。「前日まで1人練習だったが、その日だけ(戸辺)裕将(72期)と一緒だった」。偶然通りかかった男性が車から降りて近くの歯科医からAEDを借り、救急車の到着まで救命措置を施してくれた、という。「(動揺していた)裕将がその方のお名前をうかがったのだが(言わずに)去られた」。
 
 その後、戸辺氏は回復して選手復帰を目指したが「せっかく助けていただいた命。選手を35年間続けることもできた。引退して生きる」決断をした。今は「言葉では言い表せないほどの恩人に直接、お礼を言いたい」思いで過ごしている。
 
 「平成を振り返る」は平成9年の1997年。3月ダービーは浜口高彰(岐阜・59期)が特別初制覇。「これからは中部で(優勝を)たらい回しにしたい」の言葉が記憶に残る。6月宮杯は吉岡稔真(福岡・引退)が前年に続く4連勝で連覇。9月オールスターは「ファン投票で初めて1位になり、ファンに表彰式でお礼を言いたい」思いで挑んだ神山雄一郎(栃木・61期)が優勝。神山はこの後、10月親王牌、11月競輪祭と特別3連覇を飾った。12月グランプリは山田裕仁(岐阜=引退)が特別初優勝より先のGP優勝劇だった。
 
 ♤中林 陵治(なかばやし・りょうじ)1962年(昭37)7月13日生まれ、熊本県出身の56歳。慶大卒。87年4月入社、翌5月に小橋正義(引退)ら59期生のデビュー戦(花月園新人リーグ)で記者デビュー。以来、競輪の現場取材一筋32年。平成9年一番の思い出レースは9月・平塚オールスター。