≪東京五輪金へ「進化」異次元まくり≫

　脇本が令和初王者――。

　ＧⅠ「第73回日本選手権競輪」の決勝戦は5日、松戸競輪場で行われ、脇本雄太（30＝福井・94期）が優勝。賞金6500万円と「グランプリ2019」（12月30日＝立川競輪場）の出場権利を獲得した。

　脇本のＧⅠ制覇は18年10月の寬仁親王牌以来３回目。また完全優勝でのダービー制覇は86年の滝澤正光氏以来33年ぶり７人目、ＧⅠの完全優勝は98年オールスターの山口幸二氏以来21年ぶりの記録となった。

決勝戦ＶＴＲ

第73回日本選手権競輪で優勝した脇本雄太（右）。隣はキックボクシングの那須川天心

≪歴史を動かした≫

　次元が違った。平成から令和へ時代をまたいだ松戸ダービー。勝ったのは平成元年生まれの脇本だった。新時代のダービー王を襲名した世界のスピードスターは「令和元年の格式あるダービーを優勝できてうれしく思う」としみじみ話した。最高峰のＧⅠであるダービーでの完全Ｖは86年（昭61）の滝澤氏以来。平成の世には誕生しなかったが、脇本が歴史を動かした。

≪清水ねじ伏せた≫

　圧巻の３連勝で迎えた決勝。「前を取って引いて自分の行けるところから行こうと思った」と前受けから８番手まで下げて勝負どころをうかがった。残り1周から清水が先まくりを打ったところで脇本も全開。「外、外を回っても残り１周なら踏み切れる自信があった。４コーナーを回ってヒヤッとしたけど何とかゴールできた」。最後の直線、金星を狙って必死にもがいた清水を力でねじ伏せた。

　20年東京五輪での金メダル獲得を目指し進化を続ける30歳。17年トラックＷ杯（チリ）ケイリン種目で日本人14年ぶりの優勝を飾るなど競技と競輪の両方で実績を積み上げたが「まだここで満足するつもりはないし、進化を止めてはいけない」。優勝賞金6500万円の使い道についても「特にないので競技のために使えたら」と貪欲だった。

≪２回目ＧＰ切符≫

　今後の予定は競技のロシア遠征を経て岸和田高松宮記念杯（６月13～16日）へ。自身２回目のＧＰ出場も決め「去年のＧＰは悔しい思いをしたのでしっかり走りたい」。競輪界の頂点に立ったその先には光り輝く東京五輪の金メダルがある。（出田　竜祐）

　♤脇本　雄太（わきもと・ゆうた）1989年（平元）3月21日生まれ、福井県福井市出身の30歳。県立科学技術高卒。08年７月プロデビュー。通算成績は731戦263勝。通算取得賞金は５億5356万円。主な優勝は第61回オールスター競輪（18年）、第27回寬仁親王牌（18年）、第73回日本選手権競輪（19年）。１㍍80、82㌔。血液型Ａ。

　◆次走斡旋　１着・脇本の次走は6月13～16日のＧⅠ高松宮記念杯（岸和田）。２着・清水は11～14日のＧⅢ平塚記念。３着・菅田は16～19日のＧⅢ宇都宮記念。